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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章
(お兄ちゃんが、ヴィヴィの事、愛しているって……、信じて、いいのかな……?)
分からない。
今まで何度も考えてきたが、結局は分からない。
そして、解らないのには理由がある。
まだ匠海は説明してくれていない事が、山ほどある。
だから “解らない” じゃなくて、“判らない” のだ――どう、判断していいのか。
全ての事柄を説明して貰って、互いの誤解があったのであればそこを擦り合わせて。
そう、それからじゃないと、信じる事なんて出来る筈がない。
「……わかんないよぉ……っ ふぇ~~んっ」
ヴィヴィはそうガキ丸出しで喚くと、羽毛布団に沈み込んだ四肢をばたばたとバタつかせる。
そしてもうひとつ解らない事がある――兄の自慰を見てしまった、今の自分の、この気持ち。
お兄ちゃんがヴィヴィの誘惑に乗ってくれて、嬉しいの?
女として自尊心が満たされた――ただ単純にその事に、満足しているの?
目の前の自分に欲情したのに、
『お前が良いと言うまで、絶対に触れない』
――その約束を守って、我慢してくれたのが嬉しいの?
ヴィヴィの気持ちを尊重して、待っていてくれるのが嬉しいの?
どれが正解なのか分からない。
全て間違っているかも知れないし、
もしかしたら、
その全部が正解、なのかも知れない――。
11月4日(水)。
深夜12時過ぎ。
兄の書斎で椅子に腰かけたヴィヴィは、広いデスクの上に置かれた黒い砂時計を見つめていた。
「今日は寝室でなくていいのか?」と尋ねてきた匠海に、「聞きたい事があるから書斎がいい」と言ったのはヴィヴィなのに、いざその場に身を置くと何故か口にするのが怖くて、返事を確かめるのが恐ろしくて。
兄は何度も「聞きたい事って?」「何でもいいから、気になる事があるなら言ってごらん?」と根気強く促してくれているのに、ヴィヴィは決心が付かず、深海の貝のように重く口を閉ざしていた。
しかしそれも5分以上経つと、さすがのヴィヴィも焦り出した。
なにせ時間は10分しかないのに、もうその半分も自分は沈黙を貫いてしまったのだ。