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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章
( “信用” も “期待” もしないなんて、無理……。やっぱり心の奥底では、しちゃうんだもん……。「もしかしたら」って……)
自分の浅はかさが口惜しい。
最初から出来もしない事をしようと、必死になって足掻いてもがいて。
結局いつも、兄の思い通りになる。
でも――兄のせいじゃない。
自分のせいだ。
自分が馬鹿だから、狡いから、少しでも自分は傷つかないようにと、目の前の事から逃げ出そうとしてしまう。
そう、いつもその繰り返し。
全然成長していない。
ヴィヴィはもう一度小さく息を吐き出すと、恐るおそる唇を開いた。
「……して、ないの……?」
「してない……? って、何を?」
ようやく重い口を開いた妹の漠然とした質問に、匠海は不思議そうに切れ長の瞳を瞬かせる。
「………………えっち」
ヴィヴィのふて腐れている様にも聞こえるその声音に、匠海は一瞬詰まり、やがて「ふっ」と苦笑した。
「してないよ」
「…………なん、で?」
「何でって……。ヴィクトリア以外と、する気無いから」
そう言って困った様に笑う兄に、ヴィヴィは苦しそうに瞳を細めた。
「……嘘、ばっかり……」
「どうして、そう思うんだい?」
優しい表情のままそう確認してくる兄に、ヴィヴィは悔しそうに続ける。
「……お兄ちゃん、超絶倫じゃない……。我慢出来る訳、ないっ」
(そうだ……。よくよく考えてみれば、昨夜は平日の12過ぎ。次の日も仕事だし、そんな深夜にわざわざ外の女に会いに行くのが面倒で、とりあえず自分で処理しただけだったんじゃ……?)
「絶倫……。まあ、確かに……」
目の前で妹が自分の早とちりを悔んでいるのに、匠海はそこは否定せずに認めてしまった。
カチンときたヴィヴィは、続けざまに匠海を責めた。
「5ヶ月も離れてた間も、他の女の人、抱いてたんでしょう?」
“近親相姦” 発言をされた英国での世界選手権以降、兄妹は5ヶ月も日英で離れていた。
「まさか」
即座にそう否定した兄に、ヴィヴィは小さく首を振ると、唸る様に低い声を発する。
「…………信じ、られない」