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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章
(……は……? ヴィヴィ以外の女に、性的に反応しない……? そんな事、ある筈ないじゃない……)
「……何、言ってるの?」
胡散臭そうな様子を隠そうともせずにそう呟く妹に、兄は苦笑する様に頬を緩めたが、笑う事は無かった。
「信じられない? そりゃあそうだろうな。自分でも驚いたし……」
「……嘘でしょう?」
そう呟いたヴィヴィはその言葉通り、100%匠海の言葉を信用していなかった。
「嘘じゃないよ。ああ、10分経ったね……。おやすみ、ヴィクトリア。よい夢を」
デスクの上の砂時計に視線を走らせた匠海は、まるで書斎からヴィヴィを追い出そうとでも言う様に、そう就寝の挨拶を口にした。
「……おやすみ、なさい……」
ヴィヴィはそう小さく呟くと、すたすたと兄の書斎を後にした。
そのまま自分のリビングを抜け寝室へと入ったヴィヴィは、扉を閉めると大きなベッドの上にダイブする。
ぼふんと柔らかな音を立てて、羽根布団の上に沈み込んだヴィヴィのその表情は険しかった。
「嘘ばっかりっ!!」
羽根布団の中に喚いたのは、明らかに兄を詰る言葉。
自分以外に勃起しない?
よりにもよって、なんでそんな馬鹿げた嘘を吐く!?
絶倫だという事は認めて置きながら、全く筋が通っていないではないか。
言い訳するにしても、もっとマシな理由があるだろう。
そんな嘘を、自分が真に受けるとでも思ったのか?
そうだとしたら、あまりにも馬鹿げている。
というか、自分を馬鹿にし過ぎている。
『ヴィクトリア以外と、する気無いから』
そういけしゃあしゃあと発した兄に虫唾が走る。
じゃあ、あれは何だったのだ?
今年の1月2日。
年末年始帰国していた兄は、その日の早朝、朝帰りをした。
玄関ホールで兄とすれ違った時に感じた、嗅ぎ慣れない香水の香り。
明らかに一睡もしていない顔つき。
いかにも「女と一晩中セックスして朝帰りしました」と言っているその兄の姿に、あの時の自分は醜い嫉妬の炎を滾らせた。
そう、確かその日からだ。
自分が兄に抱かれた後に、吐くようになったのは――。
「―――っ」