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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

 懺悔の言葉を重ねる妹に、匠海は「いいんだよ」「解ってくれればそれで、俺はいいから」と何度もヴィヴィを慰める言葉を掛けてくれた。

 そのお陰で何とか泣く事だけは我慢出来たヴィヴィは、昨夜から気になっていた事をぼつぼつと尋ね始めた。

「ヴィヴィ、女だから、よく、分からないけれど……。通院とか、検査とか……、嫌、だったでしょう……?」

「そうだね……。もう、出来れば二度としたくはないね……。男として、自信なくなるし」

 匠海のその返事に、ヴィヴィの薄い胸はこれ以上無いほど苦しさを覚えた。

 実は昨夜、ヴィヴィはEDの検査についても調べていた。

 日本では問診と血液検査だけで診断を下す場合が多いらしいが、英国は必ずしもそうではないらしく。

 機能がどれ程損なわれているか、幾つかの検査を行うらしかった。

 匠海が普通に暮らしていれば、一生味わう事の無かったであろう恥辱や苦しみを、自分は兄1人に抱え込ませ負わせてきたのだ。

「………………」

 もう気持ちの持って行き所が判らず、押し寄せてくる感情の渦と、どれだけ謝罪しても許されないであろう事実に、ヴィヴィは口を両手で押さえて天井を振り仰いだ。

 苦しくて大きく息を吸い込むのに、吐き出すとそのまま一緒に涙が溢れ落ちそうで。

「ヴィクトリア……。俺は、大丈夫だから」

「………………っ」

 兄のその言葉に、ヴィヴィはゆるゆると首を振る。

 何が大丈夫だというのか。

 どこが大丈夫だというのか。

 自分は本当に、なんという事をしでかしてしまったのだ。

「ヴィクトリア、俺を見て。ほら、落ち着いて、ちゃんと息をして」

 兄のその指摘に、ヴィヴィは我に返り、意識して息を吐き出す。

 混乱して息苦しさを感じ、息を吸い込んでばかりいて、過呼吸になり掛けていた。

「…………お、にぃ……ちゃっ」

 息を整えながら兄を呼ぶヴィヴィに、匠海までもが苦しそうな表情を浮かべる。

「ああ、そんな哀しそうな顔をしないでくれ。俺は本当に、大丈夫だから」

「…………大丈夫、なんかじゃ……っ」

 ヴィヴィが泣き声と紙一重の声でそう言い募れば、兄は妹の椅子の肘置きを両手で掴み、その顔を覗き込んで来る。

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