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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章          

 そりゃあそうだろう。

 兄のもっとも過ぎる言い分に、ヴィヴィは何の反応も出来なかった。

「で、やけになって、お前を抱いてみようと思ったら、すぐに痛いほど反応した」

 確かに兄の言う通り、匠海は『復讐』を口にした2日後には、自分からヴィヴィを抱いた。

「……それ以降、は……? 他の女性に、反応した……?」

 そう確認したヴィヴィの胸中は複雑だった。

 自分が全て悪いと分かっている。

 けれどその後に、兄が他の女と性行為を持っていたとしたら――。

「しないよ。それにしようとも思わない。ヴィクトリア以外の女性に、触れるのが気持ち悪くなった」

「………………っ」

 兄のその返事に、ヴィヴィの心は千々に乱れた。

 匠海の男としての機能を奪ってしまい、その責任を重々感じながらも、

 一方で、自分以外の女と性行為を持てない兄に、確かに喜びを感じる自分。

(自分は……汚い……)

 自分がこんなにエゴ剥き出しで、自分本位だとは思わなかった。

 自分自身に対する怒りや拒絶に、ヴィヴィは叫び出しそうになり、咄嗟に両手で口を覆う。

(お兄ちゃんが、ヴィヴィに復讐するのは当然だった……。

 ヴィヴィを振り回すような事をするのも、当たり前だったんだ……。

 そうでもしないと、何時まで経っても馬鹿な自分は、

 お兄ちゃんが背負ってしまった運命の1割さえも、理解出来なかった……)

「ヴィクトリア……、顔を上げて」

 兄の優しいその声にも、ヴィヴィはもう首を振る事くらいしか、出来なくて。

「ヴィクトリア……。お前を苦しませたくて、こんな事を口にしたんじゃないんだ」

「………………っ」

 ヴィヴィの椅子の肘掛けを握り直した匠海は、ゆっくりと落ち着いた声で妹を諭す。

「話の流れを忘れてしまったのかい? 昨日、ヴィクトリアが、『俺が他の女性とセックスしている』と、信じてくれなかったから、『お前以外には起たない』と告白したんだろう?」

「………………」

(……確かに、そうだ……。そうだった……、けれど……)

「俺を見て。顔を上げて、ヴィクトリア……」

 そう懇願する兄に、ヴィヴィは苦しそうに顔を上げる。

「ヴィクトリア、お願いだ。俺のEDの事実で苦しむよりも、俺の事を信じてくれ」

「………………」

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