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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第99章
(お兄、ちゃん……、どうして……? どうして、そんなに、ヴィヴィなんかに……っ)
灰色の瞳を歪めて必死に請われるまま兄を見つめていたヴィヴィに、匠海はふっと表情を緩めて微笑んだ。
「確かに色々な事があったけれど、それでも俺はお前を愛しているよ。ちゃんと1人の女性としてね」
「………………う、そ」
兄の言葉を、ヴィヴィは咄嗟に否定した。
今の自分の何処に、兄に愛される要素があるだろう?
こんなに自己中心的な性格なのに。
直ぐにヘソを曲げる可愛げの無い気質なのに。
いくら “生まれた頃からずっと一緒に育ってきた妹” という存在価値があったとしても、それを上回る程の欠点しか、ヴィヴィは自分に見出せなかった。
「本当。俺はヴィクトリアが大好きだし、心から愛しているよ」
甘い兄の愛の言葉。
それが信じられないのに狡い自分は、今はそれにさえ縋り付かないと、もう自分を保てなかった。
「…………おにい、ちゃん」
甘える様にそう名を呼べば、「大丈夫」と自分を落ち着かせようと優しい言葉を掛けてくれる匠海に、ヴィヴィはその広い胸に飛び込みたい衝動に駆られた。
けれど、それはすんでの所で、兄によって回避された。
「じゃあ、10分経ったから。今日は疲れただろう……。もう休みなさい」
ずっと両手を着いていた妹の椅子の肘掛から手を放した匠海は、そうヴィヴィを促して椅子から立たせた。
兄が自分を見上げる慈愛に満ちた瞳に、ヴィヴィはなんとか口を開く。
「…………おやすみ、なさい」
「ああ、おやすみ」
そう囁いた兄にヴィヴィは微かに頷くと、ふらふらした足取りで、匠海の書斎を後にした。
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読者の皆様。
こんなクソ長い小説、ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます_(_^_)_
まだここまで読んでいらっしゃらない読者様の為に、ネタバレ防止にご協力をお願い致します。
しつこくて、すみません……。
次は、第100章です~ヽ(^o^)丿