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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章
水族館と和食屋でデートをした後、確かにヴィヴィは真行寺を直接的に誘惑したが、結局彼は自分を抱こうとはしなかった。
「知ってる。後で真行寺に聞いたから……。結局、お前を止める事が出来なくて、あんな凶行に及ばせてしまった。ヴィクトリアから離れようと、渡英した後の事は――昨日話した通りだ」
「……うん……」
渡英後1ヶ月でEDを発症した兄は、慣れない英国で独り葛藤し、苦しんだ。
「2ヶ月後に帰国した時、本当はお前を酷く抱くつもりだった。『復讐』する気だったし……。けれど、お前は怯えきっていて。まあ処女をあんな形で失って、2回目だからしょうがなかっただろうけれど……。ホント、キスの仕方さえ知らないし……、まあ正直、泣かせたくなかった。どんな事があっても、やっぱりお前は、俺の可愛い妹だから……」
「……お兄、ちゃん……」
まさか兄が、そんな風に自分を慮って抱いてくれていたとは。
優しく抱いて、ただ快楽だけを覚えこませて、その後は指を咥えて一生俺を乞い続けてろと、言われているのだと思っていたのに。
「まあ、ヴィクトリアには起つ事が分かったのだから、これからカウンセリングや服薬を続ければ、EDも治るかと楽観視していた。けれど……」
そこで言葉を区切った兄は、ヴィヴィに向けていた視線を落とし、悔しそうに続ける。
「けれど英国に戻った後……、お前が欲しくて欲しくて、堪らなくなった……。前にも増して、ヴィクトリアの事が頭から離れなくなって……。もう、ミイラ取りがミイラになった気分だったよ。優しく抱いてやった時のお前は、本当に今まで見た事が無いくらい、可愛らしくて……」
「…………う、うん」
かつて3日だけ抱かれたその日の事を思い返し、ヴィヴィは咄嗟に頬を染めた。
「まあ、そんな状態が続いていて……。最終的に “ヴィクトリアを女性として愛している” と自覚したのは、留学直前の夏――家族の英国への里帰りの時。クリスや真行寺に、嫉妬している自分に気づいた……。お前の笑った顔が、見たいと思った」
「クッキーの、レシピ……」
ロンドン滞在2日目、ヴィヴィがいつも口にしる低カロリーのクッキーが、何故か用意されていた。