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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章
分からない。
自分はここまで説明してもらってもなお、解らなかった。
「罪悪感も何も覚えずに、純粋に俺だけを愛してくるヴィクトリアを、俺はどうしても受け入れる訳にはいかなかった。“覚悟” が足りない、 “決意” が足りない、そう思っていた」
「…………え……?」
ヴィヴィの唇から戸惑いの声が漏れる。
“覚悟”
“決意”
――それは一体、何の為のものなのか?
「それにお前は短期的にしか、俺を求めていなかっただろう?」
「え……?」
「俺を襲ったとき、俺の『復讐』を受けているとき、お前はこれから先の人生を、俺と生きていく “決意” をしていたか?」
兄のその問いに、ヴィヴィの灰色の瞳が心の動揺を表すように、四方へと振れる。
「…………ヴィヴィ、目の前のことに必死で……。お兄ちゃんに、振り向いて欲しいって……」
(だって、自分を愛してくれるかも判らない、お兄ちゃんとの未来なんて……。ヴィヴィ、想像すら出来なくて……)
妹の心の中での言い分を分かってか、匠海は強い瞳をヴィヴィに向けてくる。
「俺はお前を愛していると気付いた時、一生添い遂げようと思った。確かに兄妹で結婚は出来ないけれど、2人でずっと寄り添って生きていきたいと思ったんだ。だからこそ俺は、 “覚悟” の無いお前を、受け入れる訳にはいかなかった――」
「………………」
呆けた様に自分を見上げてくる妹に、匠海は自嘲する様な歪んだ笑みを浮かべた。
「ふ……、重いか?」
「まさかっ!? ……ただ、すごく……、びっくり、しちゃって……」
咄嗟に兄の言葉を否定したヴィヴィだったが、その後は言葉が続かなかった。
(お兄ちゃんが……、お兄ちゃんが、2人の将来まで、そんなに考えてくれていた、なんて……)
あまりに自分の思い描いていた兄の姿とかけ離れていたからか、ヴィヴィは驚くというよりも戸惑っていた。