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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章
自分を諌める様に大きく息を吐き出した匠海は、更に心の内を吐露してくる。
「周りを見れば、お前と同い年でいい奴なんて沢山いる。デートも出来るし、同じ悩みを共有したり、等身大の付き合いも出来るだろう? そのうち俺の事なんて、見向きもしなくなるんじゃないか――そうお前が信じきれなくて、試したってのもある……」
「……試した……?」
兄の言葉に引っ掛かりを覚えたヴィヴィは、じっと匠海の顔を覗き込む。
「英国の世界選手権の時……、『近親相姦』のこと、言っただろう……?」
「……あ……」
(あれ、試されていたの……?)
『血の繋がった実の妹との、禁断のセックス――。
ごく限られた、選ばれた人間にしか味わえない、
究極の “蜜の味” だ。
いくら金を積んだとしても、どれだけ努力したとしても、
誰もが手に入れられる訳じゃない。
それを俺達は互いの利害が一致して、好きなだけ貪れる。
これが興奮しないでいられるか――?』
今でも兄の嘲笑と嘲りの言葉を思い出す度、ヴィヴィの胃は痛む。
「どれだけ互いに愛し合っていても、自分達の行為を正当化しても、俺達がしていることは、結局は『近親相姦』なんだ……」
「……うん……」
兄の言葉に素直に頷いたヴィヴィだったが、その心中は複雑だった。
「俺達が愛し合っている事実を説明したとしても、将来を誓い合ったとしても、非難されこそすれ、誰にも祝福されないし理解もされない……。獣同然の行いをしていることは、事実なんだよ」
「………………」
続けられる匠海の説明に、ヴィヴィはとうとう黙り込んだ。
そんな事を言われなくても、今のヴィヴィは理解している。
兄にそう試された事で、ヴィヴィは嫌というほど、自分の犯している罪を自覚したから。
(分かって、る……。解ってる、けど……。でも、そうじゃなくって……っ)
兄に試された事は、確かに気分は良くないが、どうでもいい。
自分も同じ事を、数日前までしてきたから。
ただ、ヴィヴィは凄く傷付いた――匠海のあの時の言葉に。
身も心も痛手を負い、ヴィヴィは一時、本当に兄の存在を頭の中から締め出した。