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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章
「けれど俺は言ってはいけないことを、言ってしまったんだな……。お前が自分の事を『人形』だと思っていたなんて。そんなに追い詰めてしまっていたなんて。本当に気付けていなかったんだよ……。ごめんな?」
「……うん……」
「俺の我が儘で、ヴィクトリアが自分は『人形』だと思わなければ、耐えられないくらいの『鞭』を与えてしまっていたんだ……」
「……確かに、ずっと辛かったけれど……。でも、そのおかげで、ヴィヴィ、一杯色んなことに気付けた」
『鞭』を与えられずに、匠海にばかり苦悩させて守って貰っていれば、確かに自分は楽だったかもしれないし、変わらず兄を愛し続けていたかもしれない。
けれど、一方だけが全ての困難を請け負い、一方だけが相手を守る――そんな関係など、長く続く筈もない。
「そうだね……。葉山で俺から告白して、お前の様子がおかしくて、俺の全てを否定してしまった時……。正直、ただ驚いていた……。でも、やっぱり俺を愛して欲しかったんだ。だから今度は俺が努力して、ヴィクトリアを振り向かせようと思った」
それがちょうど、1ヶ月と10日前の話。
それからの匠海は、本当に誠心誠意、ヴィヴィに愛情を示し、根気強く見守ってくれていた。
「うん……。ヴィヴィ、酷い態度、一杯取って……、周りにも迷惑、掛けまくった。本当に、ごめんなさい……」
「はは。スケートと受験を辞めるって言ったのには、正直参ったけれど。クリスのお陰でまた向き合ってくれるようになって、本当に安心したよ」
「ご、ごめんなさい……」
兄にも心配かけたし、クリスにも母にも関係者にも、多大な心配と迷惑をかけてしまった。
「ううん。ヴィヴィは馬鹿正直だから、スケートもクリスとの大事な約束も、「やっぱりやりたい」って言うと思っていたよ。うん……信じてた」
「……ん……」
昔からヴィヴィを妹として傍で見守り、支えてきた匠海のその言葉は、とても説得力のあるものだった。