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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章
「多分……、うん、きっと……、ヴィクトリアはまだ納得していない事、沢山あると思う……。だから、これから俺自身に一杯ぶつけて欲しい、何でもいいから直接聞いて、確かめて欲しい。ちゃんと全部答えて、全部受け止める」
「……うん……、ヴィヴィ、ちょっと今、頭の整理が追い付かないや……」
ヴィヴィはそう言うと、金色の頭を両手で挟み遠い目をした。
けれど兄の話を聞いた今、ヴィヴィは確実に落ち着いていた。
午前中、スケートが出来ないほど頭がごちゃごちゃだった頃に比べれば、バラバラだったパズルのピースがはまった様に、落ち着いて色々な事を思考出来るまでには回復していた。
「そうだろうね……。ヴィクトリアが俺に告白してくれて、それからもう2年半も経ったんだ……。そんなに長い間の事を、一度に説明されても、困るよな……」
兄のその気使いの言葉に、ヴィヴィは小さく微笑む。
「大丈夫。……頭の中、整理して……うん、解らないところがあったら、また、聞かせてね?」
ようやく顔を綻ばせた妹に、匠海はそれだけでとても嬉しそうに瞳を細めた。
「うん。やっぱりヴィクトリアは、可愛いね」
「……可愛くない、もん」
そうぼそりと零した後、小さく唇を尖らせたヴィヴィに、匠海は声を上げて笑った。
その兄の様子に、ヴィヴィは唇を窄めると、困ったようにはにかんだ。
「明日はスケート、集中出来そうか?」
「うん。それは絶対に大丈夫。お兄ちゃん、ちゃんと説明してくれたから……」
大きく頷いてみせたヴィヴィに、匠海は安心したように続ける。
「そっか……、マム、心配しているだろうから。ちゃんと後で謝ろうな?」
「うん。そうするね」
母にも、一部始終を見ていただろうクリスにも、コーチ陣にも、きちんと謝らなければ。
「マム……、ジュリアン……なぁ……」
そうぼそりと呟いた匠海に、ヴィヴィは首を傾げる。
「ん? マムが、何……?」
「うん……。俺……実は、ジュリアンには頭が上がらない程、世話になってるんだ……」
「え……? 世話?」
母親なのだから世話になるのは当たり前だと思うが、兄のその言い方に、ヴィヴィは引っ掛かりを覚えた。