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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章
大企業の社長である父と、スケートのコーチである母。
互いに共働きで時間も不規則で、まだ小さかった双子が起きている時間に居ない事などしょっちゅうで。
それでも双子が寂しくなかったのは、ずっと匠海が傍に居てくれたから。
加えて、朝比奈や他の使用人が、まるで家族の様に可愛がってくれたからだ。
「お前は生まれてからずっと、俺の後ばかり付いてきて、何でもマネしたがって。本当に天使の様に可愛かった。愛していた……。でも一方で、あんなに真っ直ぐで、汚れたところなんて1つもなかった純粋なヴィクトリアが、そういう実力行使に踏み切ってしまったのは……、俺の育て方が悪かったんじゃないかと、責任を感じた。だから、見たくなかった……。見ないふりをしたかった。お前がいなくなれば、自分の犯した罪から目を背けられると――っ」
感極まって言葉を区切り、堪える様に天井を振り仰いだ匠海に、ヴィヴィはもう何も言えなくて。
「……お、にい、ちゃん……っ」
(ヴィヴィ、こんなにも、お兄ちゃんを苦しめる事、してたんだ……っ)
なのに今迄の自分は、兄ひとりに罪の意識を負わせ、本当に己の事ばかりしか考えてこず。
それをやっと自覚したヴィヴィは、胸が張り裂けそうだった。
大きく息を吐き出した兄は顔を下し、困ったように微笑んだ。
「でも、ヴィクトリアが意識を失うとき、言っただろう? 『お兄ちゃん……愛してる……ずっと――』って。俺はずっとお前の事を、妹として家族として愛してきた。だから、やっぱり殺せなかった。愛しているからね……」
「……ヴィヴィ……、お兄ちゃんに、愛される資格、なんて……、ない……」
よくもまあ、これまであんな厚顔無恥でいられたと思う。
自分を女として愛して欲しい。
こんなに苦しんできた匠海に、そんな荒唐無稽な事を望んできただなんて。
もう自分に嫌気がさし過ぎて、涙さえ零れなかった。
「それは違う。ヴィクトリア、それは違うよ……」
兄のそのフォローにも、ヴィヴィは俯いて弱々しく首を振る事しか出来なくて。
自分の椅子の肘置きを両手で握ってきた匠海に、「顔を上げて? ヴィクトリア」と促され。