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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章
正直、大きくなってからのヴィヴィは、兄の役に何も立っていないどころか、その足を引っ張る事しか出来ていないのに。
「いいや。 “俺を愛すること” は出来るだろう?」
「………………っ」
確かに匠海の言う通り。
ヴィヴィは兄を愛する事だけは出来る。
それは、生まれた頃からずっとの筋金入りで、ヴィヴィが出来る唯一のこと。
「……それしか、出来ない……っ」
「それで充分だ。今のヴィクトリアは辛い事を経験して、沢山理解した。俺が今のお前に求めることは、ただ1つ――俺を一生愛して欲しい。それだけだからね」
妹の顔を覗き込みながら匠海が口にしたのは、そんな甘い甘い誘惑の言葉だった。
(そ……そんなで、いいの……かな……?)
ヴィヴィは内心首を捻りながら、兄を見返す。
「それにお前が篠宮家にいないと、 “家族” が成り立たない。ヴィクトリアが笑うと、家族みんなが楽しくなって。お前が拗ねるとマムは笑い飛ばすし、ダッドはただ甘やかすし、クリスはなんかべったりくっついてるし、俺はからかってたり……で、なんかいつも賑やかだった。うん……ヴィクトリアを起点に皆が集まって、笑い合って、幸せだった……。もちろん、今もな?」
にやりと楽しそうに笑う匠海に、ヴィヴィは何とも言えない情けない表情を浮かべる。
「……ヴィヴィ、ただ “我が儘娘” なだけ、なんですけど……」
「それでいいんだよ。それがお前の存在価値、なんだからね」
そう言い切った兄に、ヴィヴィは変な声を上げて絶句する。
「……え゛……」
(なんか、ヴィヴィだけ酷い……。ヴィヴィだけ、変な存在価値……)
なんだか兄のいい様に言いくるめられている気がして、ヴィヴィは戸惑った様に瞳を彷徨わせる。
(そ、それでいいのかな……? ヴィヴィが犯した罪……、こんな甘やかされて、終わり……?)
困惑するヴィヴィの心を固めるように、匠海は妹の椅子を再度握り直すと、その灰色の瞳でヴィヴィを真っ直ぐに見つめてきた。
「愛している、ヴィクトリア。女性としても、妹としても、もちろん家族としても……。俺はこの先ずっと、お前を守る。だから俺を信じて欲しい」
「お兄……ちゃん……」