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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章
ヴィヴィはずっと、兄に説明して欲しい――そうでないと、色んな事をどう判断していいのか見当がつかない、と思ってきた。
けれどそれは、兄の側からしたら苦しい記憶を呼び起こす、辛い作業だった。
なのに兄は、面と向かって一つひとつ説明し、これからもヴィヴィの疑問に答えると言ってくれた。
そして今日の話の中で、何よりも明確になった事があった。
(……お兄ちゃんが、ヴィヴィを……好き……)
そう、この1ヶ月の間、ずっと匠海が自分にくれていた愛の言葉。
今日全ての説明を受け、ヴィヴィは判断出来る状況にある。
この匠海の気持ちが、本当のものであるのかを。
(お兄ちゃんが……、ヴィヴィを、愛してる……ん、だよね……?)
「………………」
まだ正直なところ、100%自覚は出来てはおらず、ヴィヴィは微かに首を傾げながら、湯で温まった両掌を頬に添える。
暖かな掌から、それよりは冷たい頬にじわじわと熱が分け与えられていくのが、心地良い。
(ヴィヴィ、お兄ちゃんに「一生添い遂げたい」って言われて……、凄くビックリした……。驚き過ぎて、よく分かんなくて……けれど……)
嬉しかった。
1年以上も前から、自分を女として愛してくれていたなんて。
与えられた『鞭』も、ヴィヴィとの未来を見据えての事だったなんて。
「………………」
正直、まだしっくり来ていない事もある。
兄は自分の事が信じきれなかったから、『鞭』を与え、酷い言葉を投げ付けて自分を試した。
匠海の告白を聞いて、全てがすべて、すんなりとは受け入れられてはいない。
それに自分も、「お前が良いと言うまで、絶対に触れない」と言い、妹の心が整うまで待つ心積もりを見せた兄を信じきれなくて、匠海を試したし。
互いに己の弱さで間違った事をし、遠回りをし、勘違いをし、こんな顛末になってしまった。
けれど、嬉しい。
それら全てが、自分を愛してくれていたから、なされた事だったのだから。
兄が自分を女として愛してくれている。
それはもう、信じている。
ちゃんと信じて、受け止めている。
けれど、自分は――?
自分はどうなのだろう。
色んな事があり過ぎて、正直心が麻痺したように付いて来れなくて。