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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章         

 でも、嬉しい。

(お兄ちゃんがこの1ヶ月、「愛しているよ」って言ってくれて、最初は本当に信じられなかったけれど……。でも愛を囁かれる度に、本当は、どんどん嬉しくなってた……)

 ヴィヴィは眉根を寄せて「う~~ん……」と唸る。

「……好き……なの、かな……?」

 小さな呟きが、バスルームに響く。

 それは困った様に自身に問い掛けるもので。

 自分が兄を好きならば、兄妹は両想いという事になる。

(両想い……。……両想い……かぁ……。りょう、おもい……ねぇ……?)

 白いバスタブにごろりと後頭部を預けながら、ヴィヴィは他人事の様にそう思う。

「…………、って、りょっ 両想い~~っ!? う、嘘ぉ~~……っ」

 細く高い声でそう叫んだヴィヴィは、がばっと頭を上げる。

 ヴィヴィの心臓の鼓動が、急速に早鐘を打ち出した。

(おっ おおお、お兄ちゃんとっ ヴィヴィが、りょ……っ 両想い……。って……、こ、恋人とかになるの……? お、お兄ちゃんが、ヴィヴィの、か……彼氏さん……? お兄ちゃんが、ヴィヴィの、恋人……?)

「うっそ~~っ!!」

 今度は大声でそう絶叫したヴィヴィは、すっかり失念していた。

 リビングに朝比奈が控えているかもしれない事を。

「お嬢様、どうなさいましたか?」

 案の定、心配そうにそう扉越しに尋ねてきた朝比奈に、ヴィヴィは焦る。

「ご、ごめんっ な、何でもないのっ!」

 そう大きな声で返事をしたヴィヴィは、ゆでだこ状態になってしまった熱い頬に両手を添え、また心の中で叫んだのだった。

(うっそ~~……っ!?)







 風呂上り、ハイビスカスとローズヒップのブレンドティーを飲んだヴィヴィは、朝比奈に、

「ビタミンCを、過剰摂取されたいのですか?」

とからかわれ、

「コラーゲンの為にはね~」

と軽くかわしてやった。

「17歳でもう、コラーゲンを気にされますか……」

 そう呟く朝比奈の声を聞きながら、酸味の強い赤い液体を飲み下す。

 コラーゲン生成の為というのは冗談で、ストレス緩和の効果もあるそれらを摂取し、加えてその爽やかな酸味で気合を入れたかったのだ。

 そう、匠海とこれから、対峙するために。

 
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