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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章         

「ああ、これはいつでも読めるから。ほら、おいで」

 ヴィヴィの視線に気付いた匠海が、そう説明して自分の隣をぽんぽんと掌で叩いた。

「……ん……」

 やっとそう微かに頷いたヴィヴィは、おずおずと兄のいるソファーへと近づき。

「……そこまで離れなくても、いいんじゃないか?」

 匠海のその突っ込みに、ヴィヴィは内心飛び上がった。

 兄から1m半は離れた場所に、浅く腰を下ろしていたヴィヴィは、

「え……っ!? う、うん……」

 どもりながら恐るおそる兄に近付き、ひと2人分のスペースを空け、再度腰を下ろした。

「ふ……、ヴィクトリア、顔真っ赤」

 笑いながらそう指摘してくる匠海に、自分でも顔が熱いと思っていたヴィヴィは、両手で頬を隠す。

「……~~っ 言っちゃ、や……っ」

「可愛いね。俺の傍にいるの、恥ずかしい?」

「……う、うぅ……」

 完全に面白がっている兄に、ヴィヴィは小さく唸る。

(い、いじわる……っ だって、は、恥ずかしいよ……。お兄ちゃんと、りょ、りょりょりょ、両想いって、分かったんだもん~~っっ)

「大丈夫。獲って食ったりしないから。安心しろ」

「……~~っ」

(と、獲って食うって……っ それって~~っ!?)

 兄の言動に1人わたわたするヴィヴィに、匠海はまた自分の隣をぽんぽんと軽く撫でる。

「お願い。もう少しだけ、こっちおいで?」

 何故かそうお願いする兄が可愛く感じたヴィヴィは、すごすごとひと1人分空けて近付いた。

 手を伸ばせばすぐ届くところに、グレーのパンツに包まれた兄の長過ぎる脚があり、さらにヴィヴィの心臓は跳ねる。

「……お酒……?」

 ローテーブルの上、黒いゴブレットに注がれている飲み物に視線を移し、ヴィヴィはそう尋ねる。

「いや、これはただの、ガス入りミネラルウォーター。何か飲むか?」

「ううん。ハーブティー飲んだばっかり」

 利尿作用の強いハーブティーを飲んでしまったので、これ以上飲んだら夜中に何度も起きてしまいそうだ。

「ヴィクトリア、ちゃんとお勉強は出来たか?」

 妹を見下ろしながらそう確認してくる兄に、ヴィヴィも見上げながらこくりと頷く。

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