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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章

「うん。クリスと一緒に、今日の予定、ちゃんと終わらしたよ」
「そうか、偉いね」
微笑んでそう褒めてくれる匠海に、当然の事をしただけのヴィヴィは、恥ずかしそうにぱっと視線を落とす。
兄のルームウェアの生地が気持ち良さそうで、何の生地だろうとどうでもいい事を思っていると、匠海がぼそりと呟いた。
「あ……、時間測るの、忘れていた」
「え……?」
「10分。今からでもいいか? 砂時計取ってくるな」
「………………」
そう確認しながらソファーから腰を上げた匠海のその白い袖を、ヴィヴィは咄嗟に摘まんだ。
妹に摘ままれていると気付かずに歩き出した匠海が、ヴィヴィの手でくんと後ろに引っ張られたのに気付いて立ち止まる。
「……ヴィクトリア?」
上から降ってくる兄の声に、ヴィヴィは俯いたままぼそりと呟く。
「……もう、測んなくって……、いいもん……」
「え?」
「………………」
(10分なんかじゃ、やだもん……)
そう思いながらぎゅっと兄の袖を握るヴィヴィに、匠海から帰ってきたのは嬉しそうな声だった。
「もっと、一緒にいてくれるか?」
「……ん……」
小さく頷いて袖から細い指を解いた妹に、隣に座り直した匠海は、俯いたままのヴィヴィに甘く囁いてくる。
「ああ、可愛いなあ、お前は。本当に」
「…………く、ないって、ば」
すぐに否定したヴィヴィに、匠海がくすりと笑う声が届いた。
「ヴィクトリア?」
「ん……?」
呼ばれてゆっくりと顔を上げたヴィヴィに、匠海が視線を合わせてくる。
「繋いでいい? 手」
「え? 手……?」
ぱちぱちと瞳を瞬くヴィヴィに、兄は深く頷く。
「うん。やっぱりお前に触れたいからね。手握るくらいは、いいか?」
「い、いいよ……」
(手、繋ぐくらい、小っちゃい頃からずっとしてたし……。うん、別に、手繋ぎ、くらい……。べ、別に……)
OKした割に内心動揺しまくるヴィヴィに、何も知らない匠海は何だかとても嬉しそうで。

