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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章

「じゃあ、はい」
差し出された兄の大きな掌に、恐るおそる白い手を乗せたヴィヴィに、匠海が笑う。
「あははっ なんか、 “お手” してるみたいだな?」
「な……っ!? 違うもんっ」
咄嗟にそう言い換えしたヴィヴィを、匠海が更にからかう。
「じゃあ “おかわり” もする?」
「しない……っ」
空いたほうの手を握り締めながら、ヴィヴィは力いっぱい否定した。
「あははっ」
楽しそうに笑った匠海は、これまでの10分の面談と同じ様に、今日1日の事を面白おかしく話してくれた。
片手を繋いだ状態で長く話をするのなんて、いつぶりだろう
繋いだ手をちらりと見つめ、兄の大きな掌の暖かさを感じていたヴィヴィは、自分をじっと見下ろしている匠海に気付いていなかった。
「なあ、ヴィクトリア……」
そう呼ばれた声が先ほどまでの明るいものとは一線を画していて、気になったヴィヴィは視線を上げて兄を見つめた。
「……なあに……?」
「ここ数日……、ヴィクトリアのベッドルームで、ヨガとかしてた時……、俺の事が信じられなくて、焦ってたんだろう?」
「……え……?」
掠れた声でそう呟いたヴィヴィは、真っ直ぐに自分を見下ろしてくる匠海の瞳が強すぎて、戸惑った様に少し腰を引いた。
「『待つ』って言ってたけど、何時かきっと俺が我慢出来なくなって、無理やり抱かれると怖くなって……。だから、俺に裏切られるのが怖かったから、自分からそのきっかけをつくった」
兄のその的を射た指摘に、ヴィヴィは息を呑み、ただただその視線を受け止める。
「……――っ」
(……気付いてたんだ……、お兄ちゃん……)
「お前の誘惑に乗って俺が手を出せば、たぶん俺は、一生ヴィクトリアに信じて貰えなかった。俺がお前を本気で愛しているということを……。だから、可愛く俺を誘惑してくるお前を、本当は抱き締めて、沢山触れたかったけど、我慢したんだぞ?」
そう説明して、最後に「めっ」と幼な子にする様に窘められ、ヴィヴィの顔がくしゃりと歪んだ。
「お兄、ちゃん……っ ごめんなさい、試すような真似、して……っ」
もう少し時間を置いてから、兄に説明して謝罪しようと思っていた事実。
それをまさか兄から窘められるとは思いもせず、ヴィヴィはすぐに謝った。

