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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第100章
「俺に一杯、我が儘を言って?」
「え?」
我が儘?
「俺だけに沢山、甘えてくれ」
「えぇ……」
まさかの兄の頼みに、ヴィヴィは困った声を上げる。
けれど自分を覗き込んでくる、兄の瞳は真剣だった。
「この2年半、お前に寂しくて辛い思いを沢山させた――。償いたいんだ」
「……っ そん、なの……っ」
ヴィヴィはそう呟くと、苦しそうに顔を歪めた。
兄は兄の信念があってそれを実行に移したまでであって、そしてその起因を作ったのは紛れもない自分。
兄に自分の愛を信じて貰えなかったのは確実に、安直で場渡り的な言動を取っていた自分のせいだ。
なのに目の前の匠海は、自分の考えなど全て受け止めた様に、うっとりと微笑んでくれているのだ。
「だって、お前ってば、本当に可愛いんだもの。やっと両思いになれたんだ。もう、でろんでろんに可愛がって甘やかしたい」
償いなんていらない。
ただ、これからずっと、ずっと共に有りさえしてくれれば――。
「……ヴィヴィ、物凄く “駄目人間” になる気が、するんですけど……」
「なればいいよ」
「え~~……っ」
妹の困り果てた返しに、兄はまるで誘惑する様に、甘く甘く囁きかけてくる。
「俺が責任もって、ずっと面倒見てやるから。俺にだけ “駄目人間” になって?」
「や、やだよ~~っ」
自分が兄にだけ駄目人間になったら匠海にだけ、これから待ち受けているであろう様々な苦難を背負わせてしまう。
「ヴィクトリアに “俺がいないと生きられない子” になって欲しい」
そうくそ真面目な顔で言い切る匠海に、ヴィヴィは変な声を上げて絶句した。
「んな゛……っ!?」
(な、なんなんですか、その変質的な愛し方は……っ!!)
「自分はそんな愛し方を決して望んではいない」――そう手を変え品を変え、何度も伝えようと試みたヴィヴィだったが、匠海は一向に聞く耳を持たず。
最後にはこう囁いて、妹を骨抜きにしてしまったのだった。
「だから安心して、俺の恋人になりなさい」
その夜、兄妹は約束事をした。
・喧嘩をしても、家族の前では普通に接すること
・互いに出来る親孝行、家族孝行を考え、実行に移すこと
・受験が終わるまで、セックスは週に1回
・協力し合って、避妊をすること