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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第101章
『恋人――恋しく思う相手。
普通、相思相愛の間柄にいう。』
大辞泉 より
(恋人、か……。Sweet heart……Schatz〈ドイツ語〉……Chéri〈フランス語〉……Bella〈イタリア語〉……Amado〈ポルトガル語〉……)
そう色んな言語で “恋人” を表現していたヴィヴィは、
「ふんが……っ!?」
なぜか突然、豚っぱなを鳴らした。
自分の視界のど真ん中、細く高い鼻を急に摘ままれれば、誰だってそうなるだろう。
「ヴィヴィ……。勉強中にぼ~とするとは、いい度胸だね……?」
隣から身を乗り出してむぎゅうと更に鼻を摘まむのは、もちろん、
「く、クリス様……っ」
鼻声でそう呼んだヴィヴィに、クリスは指を離すと、座った瞳で妹を見下ろしてくる。
「僕、さっきから4回は、呼んだからね……。もうこれ、居眠りしたレベル、でしょ……?」
昼食を挟んで昼過ぎまでリンクでレッスンに励み、クリスの書斎で揃って勉強していたヴィヴィは、いつの間にか思考の海を漂っていたらしい。
「ち、ちがうぅ~~っ」
咄嗟にそう否定したヴィヴィだったが、教育兄モードのクリスは厳しい。
「違いません。お仕置きです」
そう言い渡すや否や、ヴィヴィの座っていた椅子を後ろへ引くと、その身体をひょいと持ち上げ、
「ひぃいい~~っ!?」
悲壮な声で叫ぶヴィヴィを肩に担いだクリスは、書斎からリビングへと出ると、その中心に据え置かれた紺色のL字ソファーへと妹を放った。
咄嗟に逃げようとしたヴィヴィだったが、それよりもクリスの細長い指の方が速かった。
「くっ は……っ!? ひぃいっ いやっ やめてっ てぇっ! ク、リス……っ ひゃはっ あはははっ!」
くすぐったがりのヴィヴィは、双子の兄の “脇腹くすぐりの刑” を受けながら、涙を流して笑い転げ。
1分後。
ぐったりソファーに突っ伏したヴィヴィの隣、ごろんと横になったクリスは、小さな溜め息をつく。
「はぁ……、ちょっと、休憩……」
目の上に片腕を載せたクリスは、少し疲れているようだった。
そりゃあそうか。
ぶっ続けで4時間も勉強していたのだから。