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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第101章          

 珍しく家族全員が揃った、土曜日のディナー。

 特に父グレコリーはニッコニコで、上座から皆を見渡しながら、それぞれの話に耳を傾け、相槌を打ち、幸せそうに酒をあおっていた。

「で、どんな感じよ? 受験勉強のほうは?」

 2ヶ月後にセンター試験を控える受験生を、2人も抱えた母親とは思えない能天気さで、ジュリアンは向かいに座るクリスに話を振る。

「まあ、おおむね、予定通り……。でもヴィヴィが、まれにぼうってして……、そっちの監視の方が、大変……」

 隣に座る妹をちらりと見やりながら母にそう返事を返すクリスに、当のヴィヴィは大げさに肩を竦めてみせる。

「あらま。危機感の無い子ねえ~」

 ジュリアンのその突っ込みに、ヴィヴィは「え~~……」と虚脱した声を上げる。

(マムなんて、受験に危機感、1mmもないじゃないかぁ~……)

「あはは。ヴィヴィは昔から、注意力散漫なところがあるからねえ。ひょこひょこ歩き回っていたと思ったら、気が付いたら居なくなっていて、どこかで眠り込んでいたり……。変わらないね」

 父にもそう指摘されたヴィヴィは、ナイフとフォークを握り締めながらぷうと頬を膨らませた。

 そんなヴィヴィの目の前に座っている匠海が、ふっと笑う。

「そうそう。俺、階段の途中でヴィヴィが眠ってたのには、正直、末恐ろしさを感じたよ」

「そんなこと、あった?」

 ヴィヴィが細い首を傾げれば、匠海が思い出し笑いをしながら頷く。

「ああ。2歳くらいの頃、夏で暑かったんだろうね? 大理石がヒンヤリして気持ち良かったらしくて、上の段に腕枕して器用に寝てた」

「私は春先に、ぽかぽかした窓際で寝てるの、見たわね」と母ジュリアンが。

「赤ちゃんの頃は、よく、私や匠海の胸の上や膝の上で寝てたねえ」と父グレコリーが。

 皆の話を繋ぎ合わせ、クリスが導き出した答えは、

「……ヴィヴィ、猫の生まれ変わり……?」

 ヴィヴィはブンブン首を振って抵抗する。

「いやいやいや……。クリスのほうが、よく寝てた気がするけれど……?」

 なにせ、双子の兄の趣味は “睡眠” だ。

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