この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第101章
「そうだね。それにクリスだって、いつもヴィヴィの傍で寝てたしな」
「そうよねえ。おかげで2人とも、すくすく育ってくれたわ~」
匠海と母のその突っ込みに、双子は顔を見合わせて首を竦める。
賑やかな家族を見渡しながら深紅のワインを傾けていた父が、感慨深げに双子を交互に見つめてきた。
「クリス、ヴィヴィ。やれるだけやって、万が一結果が伴わなかったとしても、努力はちゃんと血となり肉となり、決して無駄にはならないよ。それに大学は東大だけじゃないんだからね? 何年でも浪人していいんだからね? なんなら高卒でもいいんだからね?」
親馬鹿を通り越して、底抜けに双子を甘やかせようとする父に、クリスとヴィヴィは、
「「は、はは……」」
と乾いた笑いを零す。
(お兄ちゃんって、確実にダッドの血、引いてるよね……)
ヴィヴィは父と兄を交互に見比べながら、心底そう思う。
『だって、お前ってば、本当に可愛いんだもの。
やっと両思いになれたんだ。
もう、でろんでろんに可愛がって甘やかしたい』
昨夜、そう自分に囁きながらうっとりと微笑んだ、匠海の端正すぎる顔を思い出し、こっそりと肩を竦め。
そして、家族揃って食べる食事がいつもよりより美味しく感じ、幸せそうに皆を見渡したのだった。
「実は……、隠していたことがある……」
11月9日(月)へと日付が変わった頃。
ヴィヴィの白いベッドの上、妹の隣に身を横たえた匠海が、そう口を割った。
「ふぇ……?」
(隠し、事……?)
『お前の可愛い唇が “たらこ” になるくらい、してやる』
その宣言を有言実行する様に与えらえた兄からの濃厚な口付けに、身も心も蕩けさせられたヴィヴィは、ぽうっと惚けた瞳を兄に向ける。
「NHK杯のショート……、現地で観てた」
3週間前、グランプリシリーズの初戦。
名古屋で行われた、その試合。
「……え……、えぇ~~っ? な、名古屋まで、来てくれてたの?」
やっと我に返った様に大きな瞳を見開いたヴィヴィに、反対に匠海は瞳を細め、「ああ」と頷く。