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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第101章          

 匠海の片腕が自分の肩を抱き込み、もう片方の手は優しく金色の髪を梳き始める。

 それが途轍もなく気持ち良くて、ヴィヴィはしばらくそのままでいた。

 やがて片腕の抱擁を緩めた匠海に横抱きされ、ヴィヴィはソファーに腰かけた兄の脚の間に降ろされた。

「だいぶ待たせてしまったかな?」

「ううん」

「そう? ヴィクトリアがいつにも増して甘えん坊だから、寂しかったのかと思った」

 そう囁きながら瞳を覗き込まれ、ヴィヴィは素直に認める。

「……寂しかった、よ……?」

 妹の可愛い囁きに瞳を細めた匠海は、前髪の上から額に唇を押し付けた。

「それは悪かった。いっぱい甘えて?」

「……いっぱい、甘えちゃう、よ……?」

 上目使いでそう確認してくるヴィヴィに、匠海は、

「どうぞどうぞ」

とおどけて笑った。

「じゃあ、ヴィヴィに触れて?」

 何故か先程からあまり自分に触れてくれない兄に、ヴィヴィはそう甘えてみる。

「どこがいいかな?」

「……ほっぺ……?」

 微かに首を傾げながら呟いたヴィヴィに、匠海が笑う。

「ふ……、可愛いね……。おや、少し冷えてるな」

 要望通り妹の頬に大きな掌を這わせた匠海は、予想外の頬の冷たさに驚いたらしく、何度も撫でながらその暖かさを分け与えてくれた。

 それが気持ち良くて瞳を細めたヴィヴィに、匠海の形の良い唇が下りてきて、触れるか触れないかの間合いでもってお伺いを立ててくる。

「キスをしても宜しいですか? お嬢様?」

「駄目」

 何故かそれは拒否したヴィヴィに、熱い吐息だけを重ねながら匠海が問うてくる。

「駄目? それはまた、どうして?」

 その兄の声は、艶の中にからかいの色を含んでおり、

「………………」

 急に無言になってしまったヴィヴィに、匠海は寄せていた唇を離すと、不思議そうに覗き込んでくる。

「ヴィクトリア……? どうした?」

「……あの、ね……?」

「ん?」

「怒らない?」

 おずおずとそう確認するヴィヴィに、匠海は優しく微笑みかけてくる。

「何に?」

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