この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第101章
匠海の片腕が自分の肩を抱き込み、もう片方の手は優しく金色の髪を梳き始める。
それが途轍もなく気持ち良くて、ヴィヴィはしばらくそのままでいた。
やがて片腕の抱擁を緩めた匠海に横抱きされ、ヴィヴィはソファーに腰かけた兄の脚の間に降ろされた。
「だいぶ待たせてしまったかな?」
「ううん」
「そう? ヴィクトリアがいつにも増して甘えん坊だから、寂しかったのかと思った」
そう囁きながら瞳を覗き込まれ、ヴィヴィは素直に認める。
「……寂しかった、よ……?」
妹の可愛い囁きに瞳を細めた匠海は、前髪の上から額に唇を押し付けた。
「それは悪かった。いっぱい甘えて?」
「……いっぱい、甘えちゃう、よ……?」
上目使いでそう確認してくるヴィヴィに、匠海は、
「どうぞどうぞ」
とおどけて笑った。
「じゃあ、ヴィヴィに触れて?」
何故か先程からあまり自分に触れてくれない兄に、ヴィヴィはそう甘えてみる。
「どこがいいかな?」
「……ほっぺ……?」
微かに首を傾げながら呟いたヴィヴィに、匠海が笑う。
「ふ……、可愛いね……。おや、少し冷えてるな」
要望通り妹の頬に大きな掌を這わせた匠海は、予想外の頬の冷たさに驚いたらしく、何度も撫でながらその暖かさを分け与えてくれた。
それが気持ち良くて瞳を細めたヴィヴィに、匠海の形の良い唇が下りてきて、触れるか触れないかの間合いでもってお伺いを立ててくる。
「キスをしても宜しいですか? お嬢様?」
「駄目」
何故かそれは拒否したヴィヴィに、熱い吐息だけを重ねながら匠海が問うてくる。
「駄目? それはまた、どうして?」
その兄の声は、艶の中にからかいの色を含んでおり、
「………………」
急に無言になってしまったヴィヴィに、匠海は寄せていた唇を離すと、不思議そうに覗き込んでくる。
「ヴィクトリア……? どうした?」
「……あの、ね……?」
「ん?」
「怒らない?」
おずおずとそう確認するヴィヴィに、匠海は優しく微笑みかけてくる。
「何に?」