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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第101章          

「分かった?」

 にっと笑いながら確認してくる兄に、ヴィヴィは小さく頷く。

「…………誕生、日」

「ああ、お前の誕生日だよ」

 0502――5月2日。

 いつからそれを暗証番号にしているのだろう。

 ヴィヴィは一瞬気になったが、それよりも恥ずかしさの方が先に立ち、照れ隠しでぼそりと突っ込んだ。

「…………シスコン」

「ふ……、お前は俺の恋人だろうが」

「………………っ」

 兄の突っ込みにヴィヴィははっと瞳を見開き、恥ずかしくて匠海から顔が見えない様に俯いた。

「真っ赤になって、可愛い子だ。……ええと……」

 スマホ上でひとつのアプリを起動した匠海に、ヴィヴィは首を傾げる。

「これ……?」

「ああ、全社のDesk nets。勤怠情報とスケジュール管理してて……。1月……2日?」

「……ん……」

 兄の長い指が今年の1月のページに移動し、1日の勤怠情報が開かれる。

 1日の夕方18:00頃に出社となっており、深夜23:00頃に外出となっていた。
 
 そして外出から戻ったのが、その3時間半後である2日の2:30頃。

「本社に出社した日か……。確か年末に役員会で通った、英国支社の投資商品の詳細つめてて……。ああ、あれか!」

「…………?」

 何かを思い出したらしい匠海を、ヴィヴィはその腕の中から見上げる。

「年末のプレゼンに協力してくれた弁護士が、新宿2丁目で新年会してて」

「新宿2丁目?」

 不思議そうに首を傾げたヴィヴィに、匠海は面白そうに笑って答える。

「うん、オカマバーやゲイバーが密集している繁華街」

「い、行ったのっ!?」

(お、オカマさんやゲイさんに、会ったのっ!?)

 驚くヴィヴィに、匠海は「ふんっ」と鼻息荒く嘆息する。

「しょうがないじゃないか。『俺の協力無しで、あれは通んなかっただろう?』って恩売られたら」

「……はあ……」

「たぶんヴィクトリアが感じた香水は、オカマバーのニューハーフに抱き着かれたからだ。なんせ両手に花(?)で揉みくちゃにされて……」

 その時の事を思い出したようにげんなりする兄に対し、ヴィヴィは斜め上を見上げながら妄想する。

「ニューハーフさんに、揉みくちゃ……」

(お兄ちゃん、めちゃくちゃモテそう……)

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