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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第23章
そう甘い声を出してまたもや寝言を発したヴィヴィに、匠海は「猿……?」と疑問を口にする。
しかしその疑問はすぐに晴れた。
今まで気づかなかったがヴィヴィに触れていないほうの手の近くに、三つの石ころが転がっていた。
よく見るとその石には可愛い猿の細工が施されている。
目を両手で塞いだもの。
口を両手で塞いだもの。
耳を両手で塞いだもの。
ぷっと匠海は噴き出して、その一つをヴィヴィの金色の頭の上にちょんと乗せた。
それでも起きないヴィヴィに匠海は面白がって、三匹とも乗せてやる。
しかし次にヴィヴィが口にした寝言で、匠海はくっくっくと肩を震わせて笑った。
「バナ、ナ……す、き……?」
どういう話の流れでそうなったのか。
ヴィヴィの夢の中では三匹の猿に餌付けが行われているらしい。
しかも自分もいるらしい。
もう高校一年生なのにあまりにも子供すぎるヴィヴィに、匠海は若干不安を覚えた。しかし、
「そうでも、ない……か――」
四月末に見せてもらった、ヴィヴィのサロメ。
あれから紆余曲折があって振付師のジャンナによる手直しが入ったらしいが、それでも最初にヴィヴィが作り上げたサロメは普段の彼女からは想像すらできない程、あまりにも妖艶で官能的だった。
子供以外の何物でもなかった妹にそんな表情をさせる男とは、一体誰なのか――。
匠海の表情がさっと曇る。
自分はクリスほどではないにしろ、シスコンの気があるのかもしれない。
「お前にはまだ、早いよ……『お子ちゃま』は悪い事を見たり・言ったり・聞いたりしないで……素直なままに育ちなさい――」
そう囁いた匠海はヴィヴィの頭の上に乗せた石の猿をつまみ上げ、ギュッと自分の大きな掌の中にしまいこんだ。