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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第24章
八月。
名古屋でのアイスショーを終え、篠宮一家は例年通りに英国へと里帰りした。
といっても双子は父の故郷・ロンドンでも、母の故郷・エディンバラでもリンクへ毎日通っていたので日本にいるときとほとんど生活パターンは変わらなかった。
唯一のニュースといえば――、
世界ジュニアの金メダルに輝いた双子が、ロンドンの日本大使館で行われたパーティーに招待されたので、ロンドンの親族一同で乗り込んでやったこと。
エディンバラの実家の広大なプールで、ビキニを着たヴィヴィが匠海に「ベーベちゃん」と冷やかされて凹んだこと。
それ位だろうか――。
(胸にいっぱいフリルをあしらった水着だったのに……)
帰国したヴィヴィは腰に左手を当てて牛乳を飲みながら、自分のつるぺた状態を悔しがった。
そんなこんなで夏休みが開けると学校とリンクと家の往復を続け、季節はいつの間にか秋へと突入していた。
十月のシーズンインを目前に控え、双子はそれぞれのプログラムを完成させるために滑り込んでいた。
今日も屋敷で手早く予習復習を終えた双子は、リンクに向かっていた。
運転手が裏口に車を寄せてくれてそこから降り立った双子の前には、いつもは落ち着いた牧野マネージャーがそわそわした様子で双子を待ち構えていた。
「「お疲れ様で、す……?」」
不思議そうに首を傾げながら挨拶した双子の手を、牧野がばっと両手で握りしめた。
「やったぞっ!! ついに、ついに――スポンサーが見つかったんだ!!」
初めて見た喜色満面の牧野の様子に双子はまずそこで一度驚き、次に話の内容に驚いた。
Oの字に大きく口を開けたヴィヴィとは正反対に唇を引き結んで目を真ん丸に見開いたクリスは、同時に声にならない悲鳴を上げる。
「「―――っ!?」」
(ス、スポンサー――っ!?)
「しかも驚くなよ――? なんと、あの大塚薬品工業なんだっ!!」
「「えぇ~~っ!?」」
やっと声を発した双子は、お互い顔を見合わせる。
「大塚薬品って、あのカロリンメイトの――っ?」
「うん。あとは、ポカリンスウェットが有名だね……」