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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第102章            

 11月27日(金)。

 BST高等部 3年生の教室。

 広いそこではいつも通り、4つのグループに分かれて頭を突き合わせ、それぞれ勉強に励んでいた。

 ・国公立大学 & 難関私立大学組。

 ・私立大学組。

 ・就職 & 専門学校組。

 ・海外留学組。

 双子はもちろん国公立大学 & 難関私立大学組。

 同じグループメンバーは11月時点で、早稲田を受けるアレックス、慶応を受けるカレンだけになっていた。

 4人ともノートPCと睨めっこで、それぞれ予備校の講義を受けていた。

 学校で予備校の授業を受けるなど本末転倒の気がするが、あまりに皆の進路がバラバラな為、そこは仕方ないらしい。

 そして双子は、予備校の東大特進コース・11月特別講座を受講していた。

 東大特進世界史。

 東大世界史の試験は、史学科の教授だけではなく法学・経済学の専門教授も出題するため、現代史・戦後史のレベルが高い。

 これまで学習してきた内容だけでは事足りず、

 ・ケインズと二度の世界大戦

 ・石油危機、ドルショック、ベトナム戦争

 ・プラザ合意とアメリカ

 ・銀本位と金本位 等

を90分2コマで集中的に学ぶ。

 ヴィヴィは3倍速で講義を聞くと、付属テキストを速読で読み込む。

 2センチ厚のテキストをぱたんと閉じ「ふぅ」と息を吐いた時、目の前に座るカレンと目があった。

「早っ」

 そう短い突っ込みをくれた後、またPCへと視線を戻した親友に、ヴィヴィはへらっと笑う。

 双子は速読速聴が得意だ。

 カレン曰く、速読している時の目の動きとページをめくる速度が半端なく速くて、正直気持ち悪いらしい。

 2人とも、生まれた時からそんな能力を持っていた訳ではない。

 スケートのレッスンが忙しくなり始めた頃、両親があまりに学習方面に無頓着で、双子は自ら勉強時間と勉強方法を捻出し、その結果辿り着いた方法がこれ――生きていく為に、やむなく進化した訳だ。

 付属のテストを受けようと、机の引き出しに手を伸ばした時、スマートフォンが目に入った。

 匠海の英国土産、衛兵のクマさんストラップ、が付いたそれ。

「………………」

(……お兄ちゃんの “恋人” になって、もう20日も、経ったんだ……)

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