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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第24章
大塚薬品工業は老若男女から知られた大企業だった。
まさかそんな会社がスポンサーに名乗りを上げてくれるとは思いもしていなかった双子は、それぞれそう発した後、まだ信じられなくて呆気に取られて黙り込んでしまった。
そんな双子の背中を押して建物へと誘導しながら、牧野マネージャーは言語を英語に切り替えて続ける。
「まだ内密だけれど、大塚は新しい商品を発表するんだ。それが二人のイメージにピッタリで、ぜひ我が社のCMにと白羽の矢が立った訳!」
「CM……」
「新製品……」
まだ夢見心地の双子はそう呟きながらぼーっとしている。
会議室へと通されると、虚脱した様子で双子は椅子へと座りこむ。
「お~い、いい加減、現実世界に戻ってきてくれ」
双子の前に座った牧野は少し呆れた顔をすると、そう言って苦笑する。
しかしヴィヴィはそこではたと我に返ると、身を乗り出して口を開いた。
「CMって、今から撮るの? もう三週間後にはジャパンオープンが控えているのに――?」
十月一週目にはFSを披露するジャパンオープンが、三週目にはアメリカでのシニア初参戦のグランプリシリーズが控えていた。
この大事な時期に数日とはいえ拘束されるのは正直、シニア本格参戦の二人には荷が重すぎる気がする
「そうだよね……きっと製品発表記者会見とか、するんでしょ……?」
不安そうにクリスもそう呟く。
「そこは心配するな、最小限の負担で済むように話が進んでいる。CMはこのリンクで撮るし、お前達は半日だけ製品発表に出れば済むようになっているから」
双子の不安を打ち消すように牧野はそう言って笑うと、双子はほっと胸を撫で下ろした。
「それで、マムはなんて――?」
「コーチ? そりゃあ鼻高々だったよ。『スポンサー見つかるの、遅すぎっ!』って言ってたくらい」
クリスの質問に牧野は破願してそう返事すると、双子は顔を見合わせて「ははは」と乾いた笑いを漏らしたのだった。
後日、新製品発表会の場で双子のCMが初披露された。
夜の数時間、リンクを借り切って撮られたCMの完成品をちゃんと見るのは、二人とも初めてだった。