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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第102章
(そう思うなら……、今すぐヴィヴィを、押し倒して……)
けれど兄は絶対にそうしない。
自分で言い出した事だから。
『受験が終わるまで、セックスは週に1回』
約束した時は、それがこんなに辛い事とは思わなかったが。
せめて兄の表層だけでも感じたいとぴたりとその躰に縋れば、まるで慰めるように大きな掌で背中を擦られる。
暖かな掌がとても気持ち良くて。
うっとりと目蓋を閉じたようとした時、
「明日、いっぱいしような?」
耳元でそう囁かれ、ヴィヴィは驚いて尋ね返す。
「……い、いっぱい……?」
「うん。いっぱい、気持ちいいこと」
妹の欲望を掻き立たせるように、匠海はその細い腰をさらりと撫でる。
「……~~っ!?」
(いっぱいって、な、何回……? いつも3回はしてる、と思うんだけど……)
ヴィヴィが心の中でそう焦っていると、兄は妹の両腕を掴んで抱擁を緩めさせ、その顔を覗き込んでくる。
「ほら来週、ヴィクトリア、いないじゃないか。グランプリ・ファイナルで」
「あ……、そっか」
ちょうど一週間後のこの日、双子は北海道で行われるグランプリ・ファイナルで戦っている筈。
(そっか……、来週末は、家にいられないんだ……)
3日間も匠海と離ればなれになる事に寂しさを覚え、しゅんとしたヴィヴィに、兄は何故かにやりと嗤ってみせる。
「今、『来週はセックス出来ないんだ』って、思っただろう?」
「お……、思ってないですっ!!」
咄嗟に小さく喚いたヴィヴィに、
「俺は思ったよ」
そう匠海が掠れた声で囁く。
彫りの深い眉の下、灰色の瞳が欲を孕んで潤んでおり、兄の腰の上に乗せたヴィヴィの細腰が、内からずくんと痺れた。
(も……ぅ、やめて……。ヴィヴィを、焚き付けるの……)
火照った頬の熱を持て余して、兄の頬に触れさせれば、思いの外、匠海のそこも熱くて。
「……ん……」
咽喉を鳴らして兄に甘えるヴィヴィを、匠海は心底愛おしそうにその背を撫でながら呟く。
「だから、明日は沢山、ヴィクトリアを愛させて?」
「ん……。ヴィヴィも、お兄ちゃん、愛してあげるの……」
(いっぱい……、いっぱい。お兄ちゃんがいつも、ヴィヴィにそうしてくれるように……)