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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第102章            

「…………っ お前が、大事なんだよ……。大事にしたいんだよ」

「……ありが、とう……。その気持ちは、充分……」

 そう答えたヴィヴィが、しゅんと俯いたのに気付いた匠海が、その華奢な躰を暖める様に大きな掌で撫で擦る。

「ごめん……。夢中になって、抱き潰して……。はぁ……。お前、受験生でスケーターなのに……」

「いいの。ヴィヴィが、そうして欲しかったんだもん……」

 匠海の事を以前の様に、自分の中で感じて受け止めたかった。

 そして強引に強請ったのは自分なのだから、兄にはそんな申し訳なさそうな顔をして欲しくなかった。

「……ゴム、嫌なのか……?」

「……ん……。出来れば、したくない……」

「…………そうか」

 素直にそう認めた妹に、匠海は当惑の表情を浮かべ。

 そして妹の躰を清めて暖めるべく、横抱きしてバスルームへと向かったのだった。







 12月3日(木)。

 翌日にグランプリ・ファイナルを控えた双子は、いつもより早めの21時前には練習を切り上げ、屋敷へと戻った。
 
 2人とも仕上がりは上々。

 ただ、強行スケジュールでの試合となる為、そこで本来の力が発揮出来るか、というところがキーとなるだろう。

 3泊4日分の荷物を、朝比奈の手を借りながらパッキングし、忘れ物が無いかクリスと指さし確認で互いにチェックし。

 そうこうしてヴィヴィは就寝支度も終えると、左隣の匠海の部屋に続く扉をノックした。

「どうぞ……」

 兄の返事を確認して扉を開いたヴィヴィは、その隙間からひょこっと頭だけを突っ込んだ。

「おかえりなさい」

「ああ、ただいま。もう寝るのか?」

 何故か金色の長い髪を垂らしながら、顔以外見せてこない妹に、匠海は苦笑しながらそう尋ねてくる。

「うん……お兄ちゃん。お願いがあるの」

「ん……? なんだい?」

 腰かけていた黒革のソファーから腰を上げた匠海が、スーツ姿のままヴィヴィの傍に寄って来る。

「ピアノ……弾いて……?」

「ああ、ドビュッシー?」

「……ん……」

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