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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第102章            

 礼をし、最終滑走者に大量に投げ込まれた花やプレゼントを、両手いっぱいに拾い集めてコーチのところに戻り、ヴィヴィはそのままジュリアンの胸に飛び込んだ。

「Ouch! ヴィヴィ、今までで一番いい顔してたわね!」

 娘の突進してきた衝撃が強かったのか、一瞬苦しそうな声を漏らしたコーチは、愛弟子をそう褒め称える。

 けれど、いつもはコーチと教え子のけじめをきちっとつけるヴィヴィが、今日は違った。

「マム……っ ヴィヴィ、受験終わったら、精一杯親孝行するからっ だから、許してっ!!」

 そう早口の英語で喚いたヴィヴィを、胸から引きはがしたジュリアンが不思議そうに覗き込んでくる。

「え? 許すって、何を?」

「……秘密……っ!!」

 言えない。

 言える訳がない。

 貴女の息子と娘が、男女の仲で将来を誓い合っているだなんて。

 これは秘密。

 誰にも言ってはいけない、互いに墓場まで持って行かなければならない、一生を懸けて隠し続ける秘密だ。

「あははっ まあ、良く分かんないけど、お疲れさん。ほら、カバー」

 そう笑い飛ばした母に、ヴィヴィは花を預けてエッジカバーをはめると、キスアンドクライのソファーへと移動した。

 隣に腰かけたクリスに代表ジャージを着せて貰って、そのお返しとばかりに熱烈なハグをすれば、「とても素敵だった……」と耳元に囁かれた。

「ありがとう。もう、ヴィヴィ、点数どうでもいいや~っ!」

 そう笑っていると、フラワーガール&ボーイが、次々と花とプレゼントを携えて来てくれた。

 その中の1人、小さな女の子が大きな縫いぐるみを抱えてヴィヴィの傍にやって来た。

「ど、どうぞ……っ!!」

 自分相手に顔を真っ赤にして、もの凄く緊張した様子の少女に、ヴィヴィはにっこり微笑んでそれを受け取ると、小さな頭をポンポンと撫でた。

「ありがとう」

 ヴィヴィのお礼に更に真っ赤になった少女は、ぺこりとお辞儀して逃げて行った。

 「可愛いなあ♡」と萌えながら手にした大きな縫いぐるみを見つめたヴィヴィは、「ぶほっ」と可愛らしくない声と共に吹き出した。

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