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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第102章
12月12日(土)。
グランプリ・ファイナルから1週間後。
5時起きでリンクへと向かった双子は練習後、最寄りの予備校に『センター試験本番レベル模試』を受けに向かった。
今年の2月から2ヶ月毎に受けてきたその模試は、センター試験本番(自己採点)との併せて判定する事により、自分の現在位置を正確に把握するもの。
8:30から毎回10分ずつ休憩を挟み、終了したのは20:00。
リンクへ直行し、カフェテリアで朝比奈が持って来てくれたディナーを取り、23時迄練習し。
さすがの双子もへとへとだった。
全日本選手権まで2週間を切り、センター試験まで1ヶ月と5日。
心身共に疲労がピークに達した双子のストレスの矛先は、確実に匠海へと向かっていた。
いや。
正確に言うと、クリスのストレスの捌け口は、匠海本人により己へと向かうように仕向けられたと言ったほうが正しい。
いつも以上に弟にちょっかいを出し、おちょくり、からかい。
忍耐強いクリスがさすがに「イラっ」としたところで、取っ組み合いのケンカならぬ、取っ組み合いのレスリングごっこをしたり。
時には防音室に呼び出して、2台のチェロでまるで喧嘩するように1つの曲を奏でたり。
まあ能天気なヴィヴィは、自分の与り知らぬところで、兄2人がじゃれ合っているとは露ほどにも思わず。
(クリスは、凄いな~……。ストレスとか、全部自分で処理して、解決して……。いつも落ち着いてて……。それに比べ、ヴィヴィは……)
そう凹みながらヴィヴィが向かうのは、やはり匠海のところで。
「きょ、今日は……、着けなくても、いいよ……?」
パウダーイエローの膝丈のナイトウェアに、同色のもふもふソックスを纏ったヴィヴィは、黒いシーツの上にぺたりと座り込み。
同じく、ベッドヘッドに背を預け、長過ぎる脚を投げ出すように座っている匠海を見つめる。
「ヴィクトリア……?」
「ピル……飲んでる、もん……。ヴィヴィだって……」
そこで言葉を区切ったヴィヴィは、柔らかなナイトウェアの裾をぎゅっと掌の中に握りこむ。
「ヴィヴィ……っ お兄ちゃんの、中で、感じたいのっ」
そう。
ヴィヴィのストレスの捌け口は、兄との週に1度のセックスだった。