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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第102章
「あれ、物凄く可愛かったから、ずっと気になっていた」
そう真面目な顔で、ベビードールについて説明してくる兄に、ヴィヴィは若干引いた。
「えっと……、あれ……、嫌な思い出しか、ないんですけど……」
言い辛そうにそう言うヴィヴィの気持ちなど分かっているだろうに、匠海は譲ろうとはしなかった。
「じゃあ、良い思い出に書き換えてやる」
「え゛~~……っ」
まさかの返事に、ヴィヴィはベッドに突っ伏して脱力した声を上げる。
ベビードール。
それはヴィヴィにとって、鬼門とも言っていい存在。
今年の3月、試合で渡英した時、これから5ヶ月も離ればなれになる匠海に少しでも喜んで欲しくて――否、自分に飽きたのではないかという恐怖心から、ヴィヴィは着けたくもないそれを購入し、兄のホテルに着て行き。
その後に起こった事は、兄の狂言だと分かった今でも、もう思い出したくもない。
咄嗟に胃の辺りを掌で庇ったヴィヴィを、匠海は仰向けに返すと、その上から覆い被さり何度も優しい口づけを落としてきた。
そうされると、軋み始めていた胃がすぐに楽になり、ヴィヴィはそのまま兄のキスをうっとりと受け入れた。
(そうだよね……。もう、ヴィヴィはお兄ちゃんの恋人なんだもん。お兄ちゃんの気持ちについて、不安や恐怖なんて感じる必要、ないんだもんね……)
最後に妹の薄い唇を食んでちゅうと吸った匠海は、唇を離してその顔を覗き込んできた。
「どうしても、嫌か……? 綺麗で上品なもの、用意してやる」
「じゃ……、こ、今度、ね……?」
そう言ってはぐらかそうとしたヴィヴィの気持ちがバレたのか、匠海が言及してくる。
「クリスマス。着てくれる?」
「え……っ? え……と、あ……、う、うん……」
物凄く期待を瞳に滲ませて至近距離で見下ろされて、ヴィヴィが匠海に勝てる筈もなかった。
「楽しみにしてる」
満面の笑みを浮かべてそう締め括った兄に、ヴィヴィはふと心配になって確認する。
「……綺麗で……上品なの……だよ、ね?」
「うん、期待していて」