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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
12月21日(月)。
日中の気温が10度を下回り、底冷えしたその日。
BSTでは終業式が執り行われ、双子は冬休みへと突入した。
5時起きでリンクへ赴き7時間の練習、帰宅して7時間の勉強――これがこの先、受験が終わる2月末まで続く。
そして翌日の、12月22日(火)。
4日後に控える全日本選手権のリハーサルを、松濤のリンクで行った双子は、屋敷に戻り予定通り勉強を終え。
それぞれくたくたになり就寝の挨拶を交わして風呂を使えば、ヴィヴィはやはりウトウトとしてしまった。
(……っと、いけない……っ 早く、準備しなきゃ)
手早く、けれど隅々まで丁寧に身を清めたヴィヴィは、金色の髪を乾かし、ヘアアイロンで背中の中ほどまである長い毛先を巻き始めた。
ヴィヴィは温室育ちのお嬢なので、日常生活の身の回りの事を行うのは不得手だ。
いわゆる――料理、掃除、洗濯、裁縫、といった類いの事が。
けれど、小さな頃からフィギュアの試合において、自分で化粧&ヘアメイクをする必要があったため、意外とヘアメイクは得意だったりする。
ちなみに通常の化粧の知識が乏しいのは、舞台用の化粧の仕方しか学んでこなかったから。
こての部分でやけどしない様に気を付けながら、肩から下をくりんくりんに巻き上げたヴィヴィは、その出来栄えに満足そうに微笑んだ。
(ちょっとでも、可愛く見られたいの……、忙しくて、デートも出来ないし……)
白いバスローブを纏ったヴィヴィは、バスルームの扉を少し開け、朝比奈がいないことを確認すると、そそくさと匠海の部屋へと向かった。
ノックをするとすぐに迎え入れてくれた兄に、ヴィヴィは蕩けそうな笑みを浮かべ、きゅうとその胸に抱きつく。
「おや。髪の毛、可愛いな」
「ん。クリスマスバージョン、なのです」
茶色のバスローブを纏った逞しい胸に、躰を擦り付けてくる妹を、匠海はひょいと抱き上げて寝室へと運び込んだ。
そして降ろされたのはやはり、寝室の奥にあるウォークインクローゼットで。
「中に置いてあるから。着替えられたら、出てくるんだよ?」
「……う、うん」
どもりながらクローゼットの奥へと入って行くヴィヴィを残し、匠海は扉を閉めて出て行った。