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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
広いクローゼットの奥、オットマンの上に置かれていたのは、宣言通りのベビードールで。
「……冗談、じゃ、なかったんだ……」
思わずそう零してしまったヴィヴィは、一瞬の躊躇ののち、纏っていたバスローブを脱いだ。
柔らかな素材のベビードールを纏い、目の前の姿見に全身を映したその表情は、困ったようなそれで。
(やっぱり、スケスケなの……)
乳房を覆い隠しているシフォンは、薄桃色の小さな乳首も透けてしまうくらい薄い生地で。
「……あれ……?」
そう小さく呟いたヴィヴィは、首を捻る。
(ショーツ、無い……? ってか、これ……何……?)
π字形の、レースを施された紐を手に取ったヴィヴィは、また首を捻りそれを元に戻すと、きょろきょろと辺りを探す。
が、やはりショーツらしきものは何処にも無くて。
「……おにい、ちゃん……?」
クローゼットの扉を少しだけ開き、顔を覗かせたヴィヴィは、ベッドの端に腰かけている匠海を呼ぶ。
「ん? 着れたかな?」
楽しそうな表情でそう尋ねてきた兄に、ヴィヴィはふるふる首を振ってみせる。
「ん~ん……。ショ、ショーツ、無いの……」
「え? あるはずだよ」
「え~……?」
困った様に眉尻を下げる妹に、匠海が続ける。
「レースの紐みたいな物、無かったか?」
「……~~っ!? あ、あれ、ショーツなのっ?」
先ほど目にしたπ字の物を思い出したヴィヴィは、素っ頓狂な声を上げる。
「そうだよ。なんなら、俺が履かせてあげようか?」
にやりと嗤った兄のその笑顔がかなり悪そうで、ヴィヴィは恐怖を覚えて速攻断った。
「け……っ 結構ですっっ」
扉を閉め、すごすごとクローゼットの奥へと戻ったヴィヴィは、レースの紐パンならぬ紐に脚を通し。
(……っっ んに゛ゃ~~っ!?)
ショーツとしての意味を全く成していないそれを鏡越しに見たヴィヴィは、心の中で絶叫した。
ヘナヘナとオットマンに腰を下ろし、細い両手で頭を抱える。
(……これ、ヴィヴィが用意したベビードールより、え、えっちじゃん……。綺麗で上品なの、用意してくれるって言ってたのに~っ! ……でも、な……、お兄ちゃん、ヴィヴィの為にいっぱい、我慢してくれてるし……)
※π → 記号のパイ=3.14…… です、うまく表示出来ない……。