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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
毎日、自分を抱きたいと言う匠海。
恋人になって初めてのクリスマスだというのに、兄には、外に出かけたり外泊したり――今の多忙なヴィヴィ相手でなければ出来たであろう事――を、我慢させている。
だから、希望はなるべく叶えてあげたい。
それに貧相すぎる自分の躰にこれを纏う事によって、兄を視覚的にも楽しませる事が出来るのならば。
ヴィヴィはそう心の中で結論付けると、ベビードールと一緒に置いてあったものを頭上に乗せ、白いルームシューズを引っ掛けてクローゼットの扉を開けた。
おずおずと出て来た妹を、ベッドに腰掛けたままの匠海が、じっと見つめてきた。
兄が用意したのは、白のベビードール。
肩紐は細く、Vラインと薄い腹の前で開いているそこは、フリルレースと氷の結晶を模した刺繍や飾りで彩られ。
裾はお尻が半分隠れるくらいにフリルがあしらわれ、そしてヴィヴィが両手で隠しているそこには、レースの紐がショーツとして身に着けられていた。
ヒールを履かなくても細長い両脚は、すらりと真っ直ぐ伸びで艶々で。
そして小さくて可愛らしい顔の周り、金色の巻き毛をさらに引き立たせるのは、白い小花とファーで作られた花冠。
まさに全身白でコーディネートされたそれらを身に纏った妹を見た、匠海の第一声は――、
「やばい……」
「……え……?」
(……やばい……?)
そう頭の中で首を捻ったヴィヴィに、
「これは……、参ったね……」
否定的にも取れる言葉を発した兄に、ヴィヴィの小さな顔に不安そうな表情が浮かび上がる。
「……に、似合って、ない……?」
(ん~と……、似合ってる って言われるのも、微妙、なんだけど……)
「似合ってるに決まってるじゃないかっ はぁ……、なんて可愛らしいんだろうね」
「……そ、そう……」
むきになっているようにも聞こえる声でそう訴えてきた兄に、ヴィヴィは取りあえずほっとした。
「はぁ……、お前は本当に、天使だよ」
いつもは理知的な光を湛えた灰色の瞳を、熱く潤ませた匠海がそう例えた様に、金色の頭に白い花冠を乗せたヴィヴィは、まさに天使の如き佇まいだった。