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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
(「エッチしよ?」と迫ったかどうかは定かでないが)デリラの膝の上でデレっと寝ていたサムソンは、髪の毛を切られ、宿敵ペリシテ人に捕らわれてしまう。
怪力を無くしたサムソンは両目を抉り取られ、粉ひきをさせられ、散々な目にあい。
最終的には神に祈りを捧げて力を取り戻し、ペリシテ人とデリラを道連れに、神殿の下敷きとなって死んでしまうという。
「いくらデリラに骨抜きだからってね、騙されてるのバレバレなのに、なんで言っちゃうかな~?」
こてと首を傾げたヴィヴィに、隣に座っている匠海が尋ねてくる。
「ヴィクトリアはどう思う?」
「え? あ、うん……。え~と、サムソンは、デリラに騙されてると気付いてたけど、自分の秘密を漏らさないままでいたら、最終的にデリラに捨てられると思った……とか?」
細い顎に指を添えてそう持論を展開したヴィヴィに、匠海は頷く。
「そうかもしれないな。それだけサムソンは、デリラを愛していて、離したくなかった……」
「お兄ちゃんは? どう思う……?」
妹のその問い掛けに、匠海はふっと苦笑した。
「ん~、サムソンはな、孤独だったんじゃないかと」
「孤独?」
「うん。神に選ばれて怪力を与えられたのは、自分が望んだ事じゃなく……。怪力の使い道も解らず、殺戮を繰り返し。敵からは凶暴な男、味方からは異教徒を愛した異端児として疎まれていただろう?」
「うん」
頷くヴィヴィの隣で、匠海は半分残っていたペットボトルの水をあおった。
「恋に落ちたデリラの望みなら、神を裏切ってもその愛に応えたい……。普通の男になってデリラに愛されたい、と思ったのかもしれないね」
兄のその深い考察に、ヴィヴィはうんうんと頷いて納得する。
「……そっかぁ……。じゃあ、デリラも孤独だったのかも」
「ん?」
「ほら、デリラは遊女だし、その美貌であらゆる男を虜にしちゃう……。でも、本当に欲しい真実の愛は、誰も与えてはくれなくて……」
妹の言葉を促すようにその肩を抱いて擦ってくる匠海に、ヴィヴィは続ける。