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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章             

『助走から入って……、2回転アクセルですね?』

「これから、3回転に挑戦すると思います」

 最終グループの6名の選手が、次々に決めるジャンプに、会場には拍手が上がっていた。

『さて、篠宮本人も、試合後のインタビューで「エッジが引っ掛かり、一瞬頭が真っ白になった。とりあえずシングルを飛んで。音楽が流れているから続けなきゃと……、音楽に助けられた」とコメントしていました』

 塩原アナウンサーが読み上げたヴィヴィのコメントに、八木沼が続く。

「そうですね。篠宮選手、これまで試合でほとんど転倒等のミスをしたことがないので、ここはひとついい勉強になったと思って、次の糧にして欲しいと思います」

『篠宮……、次は3回転でしょうか?』

「だと思います……。ああ、軸も真っ直ぐの、安定した3回転アクセルですね」

 アクセルを美しい軌道で降りたヴィヴィに、大歓声が送られる。

『場内から、大きな拍手と歓声が上がります。そして、八木沼さん。最終グループの第一滑走が篠宮ということですが?』

「はい。身体も暖まった状態ですし、前に滑った選手の演技や得点が目に入らない。今の篠宮選手にとっては、自分の事だけに集中出来る、良い滑走順かもしれませんね。あ……、また3回転アクセル飛びましたね」

 他の選手の合間を縫って、ヴィヴィがアクセルを降りる。

『着氷後も勢いを殺さない、美しいアクセルですね』

「本番では、単独とコンビネーションを付けてくる予定です」

 6分間練習の終盤、ヴィヴィはリンクサイドのコーチの元へ戻り、鼻を噛んだり水を飲んだりする姿が映し出されていた。

『6分間練習、残り1分となり、篠宮は氷の上で流しています。リンクサイドには、昨日男子シングルで見事優勝した、双子のお兄さん――クリス選手も駆け付けています』

「心強いでしょうね」

『6分間練習が終了し、後に滑る選手が引き上げて行きます』

 塩原アナウンサーの言葉通り、最終グループ第一滑走のヴィヴィだけを残し、他の選手はリンクを降りて行った。

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