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第103章 　 　　 　　　 　 　

「ステップからの３回転ループ。降りた後の流れの中、フリーレッグのエッジを掴んで……後半でのこの余裕は流石ですね」

　八木沼が舌を巻く中、ヴィヴィは後半のジャンプを立て続けに飛んでいく。

『カスタネットの音と合わせた、振付からの２連続ジャンプ』

　スピードに乗りながら、頭上で左右の手首を打ち鳴らしたヴィヴィが２連続ジャンプを降りる。

「トリプルフリップ―ダブルトウループ……そして、単独の……３回転サルコウ」

『成功する度に、場内のボルテージが上がってきている！』

　打楽器の激しいソロの中、スカート部分を両手で後ろから前へ勢い良く振り払い、真ん中で割れた赤いスカートがひらりと宙に舞う。

『ＳＰのくやしさと合わせて、情熱を開放していくクライマックス』

「ステップシークエンス。激しい曲調の中でも、妖艶なデリラと力強いサムソンを演じ分けていて。緩急を使いこなした深いステップ……、ジャッジにもいいアピールになります」

『世界一のステップ、との呼び声高い篠宮。一気に観客を味方に付けて、ステップを滑り切りました。そして、その瞬間まで、息を呑んで見つめている場内――』

　氷の上では、ヴィヴィが最後のジャンプ、３回転フリップ　＋　２回転ルッツ　＋　２回転ループを降りる。

『ん～っ！　３連続！！』

　鮮やかに決めた３連続ジャンプに、思わず塩原アナウンサーが唸り声をあげた。

「後半に来てこれは、大きいですね！」

「コレオグラフィック・シークエンス。イナバウアーからの、バレエジャンプ、は、高い――！」

　最後の力を振り絞って飛び上がったバレエジャンプは、美しい直線を描いた開脚で。

　そして鞭のように瞬時にしならせる腕の動きと共に、１８０度開脚したスパイラル。

『篠宮、最後の最後、力を振り絞ったジャンプで、会場を魅了します』

「チェンジフットコンビネーションスピン。ああ……、回転速度も安定し、綺麗なビールマンです」

　ＧＰシリーズ中国杯の時の様に、速度が落ちることもなくスピンを回りきったヴィヴィに、惜しみない拍手が送られていた。