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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
『会場からはもう、拍手が鳴り止みませんっ そして片膝を付いて両手を掲げ、堂々のフィニッシュー!!』
興奮した塩原アナウンサーに、いつも冷静な八木沼も明るい声で喜ぶ。
「やりましたね、篠宮選手! 十二分に気迫が伝わってくるフリーでした。これは相当な点数、期待出来るのではないでしょうか?」
『場内はスタンディングオベーションっ! 篠宮自身は、今日の演技にどう評価を下しているでしょうか?』
滑り終えたヴィヴィは、笑顔で四方に向かって礼を送り。
その直後には、上から次々に降ってくる花とプレゼントを、フラワーガール達と、必死こいて拾い集める姿がそこにはあった。
『このままで終わる訳にはいかなかった。篠宮のこの演技直後、笑顔爆発の“この”表情です! 世界が彼女を待っている。一発勝負のFPでもって、表彰台が見えたかどうか。最終グループ一番滑走、魅せてくれました。櫻井さん。いや~、お客さんもこの表情、待っていたと思いますよ?』
塩原アナウンサーが、メインキャスターの櫻井に話を振る。
「はい。昨日のSP、篠宮選手は相当悔しい思いをしたと思いますし……。今シーズン、FPは自信を持っていたと思います。なので自身が緊張に勝ったからこそ、この笑顔が生まれたんじゃないかと。この全日本というドラマには、篠宮選手の笑顔は必要ですもんね?」
『やはり続けてきた練習が、その裏打ちとなって、緊張に打ち勝ったということでしょうか。荒河さんどう見ましたか?』
トリノ五輪金メダリストの荒河静香に、塩原アナウンサーが質問を投げかける。
「ええ、今日は一つひとつ慎重だったんですけど、それが丁寧さと集中力によく繋がっていました。最初から最後までよくスピードに乗って、最後の方に行けばいくほど、気迫も加わって凄く魅力的な演技だったと思います」
『ええ、まあ確かに、八木沼さん。クライマックスに向かっては圧巻っ というところでしたね?』
「そうですね。第一滑走ということで、他の選手を気にすることなく自分の世界に集中して、6分間練習を終了して、ちゃんとコントロールして進めたのではないかと。そういうところも一つポイントでしたね」