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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
「はい。ただ、2年後のオリンピックで、活躍が期待されるであろう若手の選手――本田まりな(19)選手、樋口若葉選手(19)、坂元花織選手(20)、紀藤優香選手(20)は、3回転+3回転の確率や、ジャンプの安定性が上がってこず……。篠宮選手と宮平選手の上位選手と、彼女達の間にはかなりの点差が開いている……。こう、何と言いますか、少し篠宮選手に、世界選手権の枠取り……女子の3枠なんか、を頼り切っている状態ですね」
画面では、ヴィヴィがキスアンドクライを後にし、バックヤードへと引き上げていく様子が映し出されていた。
『そうですね~。五輪までの2年間、日本女子全体の底上げにも、期待したいところです。では、演技を終えた篠宮選手のインタビューです』
テレビ局のブースに現れたヴィヴィを、女子アナウンサーが迎え入れる。
『放送席、篠宮ヴィクトリア選手です。お疲れ様でした』
「ありがとうございました」
コスチュームの上から代表ジャージを羽織ったヴィヴィが、笑顔でお礼を述べていた。
『滑り終えた後の表情が、「ふ~」と息を吐いた様に見えましたけれども、いかがでしたか?』
その質問に、前髪を上げた額に赤いヒンディーを貼ったその上から、ヴィヴィはペタリと掌を添えて口を開く。
「はい。え~……、良かった部分もあるのですが、やっぱり細かなミスもあるので。まあ、今はあまり、手放しで喜ぶことは、出来ないかなと思っています」
『今日はどんなイメージを持って、滑りましたか?』
「えっと、振付の宮田先生に、サムソンとデリラを演じ分ける様、言われていて……。目線の使い方、や、動作の俊敏さ……、うん。最初は滑らかなスケーティングでデリラを、ステップでは力強いサムソンに、代わる様にと滑りました」
ヴィヴィがとつとつと語る言葉に、女子アナがうんうんと頷きながら聞いていた。