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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
大凶のおみくじを引いて凹んでいたのが、まるで昨日のように思い起こされるのに、もうあれから1年も経過しているとは。
「うん……。去年はスケートに勉強に、ずっとフル回転だったから、そう感じるのかもね……」
「そっか……」
双子はほぼ同じスケジュールで過ごしてきたので、互いにその大変さは解っていた。
「クリス……、今年、どうする?」
「どうするって……?」
「おみくじ……、ヴィヴィ、引くの怖い~っ」
クリスと繋いでいる手に力を込めながら、ヴィヴィは眉をハの字にして情けない声を上げる。
(今年も大凶だったら、ヴィヴィもう、立ち直れないDETH(死)……、じゃない“デス”……)
「じゃあ、やめておけば?」
いつの間にか双子の隣に立っていた匠海の、その当たり前な突っ込みに、ヴィヴィは空いているほうの拳も握り締めて主張する。
「でも引きたいのっ!」
「あははっ 毎年引いてる恒例行事だしな? じゃあ、受験終わってから引きに来るとか?」
匠海のその提案に、ヴィヴィはぱっと表情を改めて発する。
「あ、そうしよっかな。クリスは、どうする?」
「僕は、引くよ……」
おみくじなんて大して信じていないのか、昨年凶を引いたにも関わらず、そう強気な発言をしたクリスに、
「おお、チャレンジャー」と匠海が。
「まあ、クリスは何引いても、大丈夫な気がする」とヴィヴィが。
「貴方達、おみくじ引くわよ~!」
父とラブラブ手繋ぎをした母ジュリアンが、3人の子供達を振り返ってそう呼び掛ける。
結局、ヴィヴィ以外の皆がおみくじを引き。
「お、去年の吉から中吉に格上げだ」と父が。
「あら~っ 今年は吉~?」と不服そうな母。
「…………ふうん」と余裕の表情で、昨年に引き続き大吉を引いた匠海。
そして、
「………………」
ひとり黙り込んで呆然とおみくじを見つめているのは、他ならぬクリスで。
隣から覗き込んだヴィヴィも、絶句して言葉にならなかった。
(だ、大凶……。……っていうか、大凶って、こんなに頻繁に引き当てるものなの? もしかしてクリス、かなりくじ運悪い?)
そして何故か父は、落ち込むクリスを、面白そうにカメラに収めていた。