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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
「ええと……。悪い運はこれで使い果たして、後は良い事あるってことで……」
匠海のその苦しいフォローに被せて、ヴィヴィはというと着物の胸に掌を当て、心底ほっとした声で続く。
「ヴィヴィ、引かなくて、良かったぁ……」
「……っ ヴィ~ヴィ~……っ!?」
恨めしそうな瞳で妹を睨んでくるクリスに、ヴィヴィは「やっちゃった(・∀・;)」という表情を浮かべ。
「あ゛……、ごめ~ん。じゃあ、半分個しようね?」
クリスの手からおみくじを取り上げたヴィヴィは、それを縦半分に折ると、爪でしっかりと折り目を付けて指で半分に切り裂いた。
「え……?」
差し出された半分のおみくじに、クリスが不思議そうな瞳を妹に向ける。
「クリスの大凶、ヴィヴィが半分貰う。だから東大落ちる時は一緒だよ~。ふはは……。正に、運命共同体ですなぁ~(-_-)」
達観の境地でそう述べたヴィヴィに、クリスが驚きと感激をない交ぜにしたような瞳で見下ろしてきた。
「ヴィヴィ……。ありがとう……」
「どういたしまして」
いつも自分を影から支えてくれるクリスに、こんな事でしかお返しが出来ないけれど、それでも双子の兄の嬉しそうな顔を見れてヴィヴィはほっとした。
「写真撮ってやるよ」
匠海がそう言って、スマートフォンを双子に向かてかざす。
そして先ほどまで、カメラ小僧ばりに写真を撮りまくっていた父は、今は母にご執心で、子供達に視線さえも向けていなかった。
「うんっ 撮ってとって!」
ヴィヴィが明るい声でそう催促し、クリスと一緒に、互いに半分この細長いおみくじ片を手にポーズをとった。
「お前ら、ホント、仲いいな?」
写真を撮り終えた匠海が、双子を見比べながらそうしみじみと呟く。
「うん。だって、ヴィヴィにとってクリスは My better half(生涯の伴侶 = 自分の半身)だもん。ね、クリス?」
そう確認するようにクリスを見上げれば、暖かな光を湛えた灰色の瞳が自分のそれへと合わされる。
「うん……。もちろん、僕にとってのヴィヴィも、そうだよ……」