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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
「なんか、双子っていいな。俺、今度生まれ変わるなら、双子で生まれてみたいかも」
仲睦まじい双子を前に、彼らしくもなく心底羨ましそうにそう呟いてきた匠海に、ヴィヴィは視線を向ける。
「そ? あ……、内容読む前に、おみくじ破いちゃった。……、ふぎゃっ!? こ、こっち「受験:再考せよ。望み通りにはならぬ」って書いてある。クリス、交換してっ!」
自分の持っていたおみくじ片を、クリスの手に握らせたヴィヴィに、
「え……。本当にMy better halfだと、思ってる……?」
疑わしい眼差しを向けてくるクリスに、ヴィヴィは自信満々に大きく頷く。
「もちろん! だってクリスは本番で居眠りでもしちゃわない限り、余裕で受かるじゃないっ ヴィヴィなんて必死に受けても、どうなるか分かんないのにさあっ!」
半ばやけくそ気味の妹のその言い分に、クリスは「だめだこりゃ」とでも言いたげに肩を竦めてみせ、自分の持っていたおみくじ片を妹に差し出したのだった。
屋敷へと戻るリムジンの中、ヴィヴィは眠そうなクリスに肩を貸しながら、スマホを見つめていた。
そこに映し出されていたのは、昨年の自分が引いた大凶のおみくじ。
天の下 国原くらし み空ゆく
月の光は さやか なれども
伏して見れば山野は暗く、仰げば真如の月が照っている。
その接し会ったところに立っている自分を、見失ってはならぬ。
此処で静かに思慮を深め、目標に向かって一歩を進めなさい。
「………………」
(そういう、意味だったのか……)
高く細い鼻から微かに息を吐き出したヴィヴィは、その内容に今更ながらに合点する。
確かに昨年の自分は、匠海の表向きの言動に翻弄され、混乱をきたし、最終的に自分を見失って玉砕してしまった。
(お兄ちゃんはヴィヴィとの将来を見据え、本当に闇夜に浮かぶ月の様に、ヴィヴィを導き待っていてくれたのに……)
気付けて、良かった。
気付かせて貰えて、良かった。
すべてが兄のお陰で、匠海の全部を拒否したヴィヴィと辛抱強く対峙し、暖かく見守ってくれた。