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第24章 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

『成程……昨日のスコアでは芸術面も物凄い点数が出ましたから、オリンピックに大きな期待を寄せてしまいますね！』

　男性司会者が嬉しそうな顔でそう発すると、小田も満面の笑みで頷いた。

『そうですね。女子の中では一番金メダルに近い選手だと思います』






　クリスはそこでテレビを消すと、ほっとした表情でライブラリーのソファーに背を預けた。その隣でヴィヴィもふ～と細く息を吐き出す。

「すごく……べた褒めだったね、ヴィヴィ……」

「クリスだって……Catch Me if You Can。凄く評価高かったじゃない？」

クリスは映画『Catch Me if You Can』のサウンドトラックから Opening Title SequenceとDoctor, Lawyer, Lutheranを組み合わせた曲をＦＰで使用していた。

　パイロットや医師、弁護士に偽装しては、1960年代に世界各地で小切手偽造事件を起こし「天才詐欺師」と言われたフランク・W・アバグネイル・Jr（レオナルド・ディカプリオ）と、彼を追うＦＢＩ捜査官カール・ハンラティ（トム・ハンクス）の姿を、痛快かつ人間味豊かに描いた作品だ。

　それを見事コミカルに時にシリアスに演じ分けて見せたクリスは、ヴィヴィから見てなんだか一皮むけた感じがした。

　元々氷の外では感情を表に出さないクリスだが、プログラムを滑るときは違う。まるで普段溜め込んでいた感情を爆発させるかのように体全体を使い、くるくる変わる表情でそれを表現してみせる。ヴィヴィにはその才能が今シーズン、このＦＰを滑り始めてからより一層開花したように思えてならない。

「クリスは……もしスケート取り上げられたら、生きていけないかもね……？」

　少し心配そうに小さく呟いたヴィヴィに、クリスは隣のヴィヴィを振り向いて彼にしては明け透けに、すごく意外そうな表情をした。

「な、何……？」

　上から見下ろされたヴィヴィは、（変なこと、言っちゃったかな……？）と心配になりながらクリスを見上げる。

「ヴィヴィだって……そうだよ……」

　自分と同じ色の瞳を覗き込みながら静かに発したクリスの言葉に、ヴィヴィは「え……？」と返す。

「ヴィヴィだって、スケートがなかったら……自分を、保てないんじゃない……？」

「………………」