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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第24章
クリスの言葉にヴィヴィは黙り込むと、頭の隅で自分を振り返る。
楽しい時も苦しい時も、いつも傍にはスケートがあった。匠海への恋心を受け止めることができるようになったのも、昨シーズンのFPシャコンヌのお陰だった。そして今も、欲しくて……喉から手が出そうなほど欲しくて堪らない兄への募る思いを、サロメに投影してなんとか自分の気持ちに折り合いをつけている――。
「……確かに……クリスの言う通り……」
意識をクリスの視線へと戻し彼を見上げれば、クリスの瞳は揺らいだ。しかしそれは一瞬でヴィヴィから視線を外すと壁掛け時計を見上げ「時間だ……」と呟く。
双子はジャパンオープンの翌日に行われるエキシビションも兼ねたカーニバル・オン・アイスに出演するべく、腰を上げて準備に取り掛かった。