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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
スマホから視線を上げたヴィヴィは、斜め前に座っている匠海と視線が合い。
「ヴィヴィ、運転中にそんなの見てたら、酔うぞ?」
そう指摘してきた兄に、ヴィヴィはふわりと微笑み、小さく頷いた。
「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
ありがとう。
本当にありがとう。
右往左往してばかりの自分を、待っていてくれて。
全てを見失ってしまった自分を、見捨てないでいてくれて。
「どういたしまして」
そう返してきた匠海の表情は、完全に “優しい兄” としてのものだけど。
もう、自分は匠海の心を知っているから、不安になったりなんてしない。
これからは自分の番。
どれだけ匠海の愛を受け止めて、返していけるか。
さすがに今すぐは、受験と試合で無理だけれども。
大学に進学出来たら、自分は大人になって、否、なれるように努力して、そして――。
(幸せに、したいの……。お兄ちゃんを……。そして、周りの大切な人達も――)
その気持ちのまま、自分の細い肩に凭れたクリスの頭を撫でると、
「ん……」
そう甘える様に頭を擦り付けてくる双子の兄に、ヴィヴィは微笑んだのだった。
翌日、1月2日(土)は、通常通りにスケートと勉強に励み。
そして、夜は匠海に「姫初め」とねっとり抱かれ――その詳細は筆舌に尽くしがたく、うん、そっとして置いて欲しい。
1月3日(日)。
早朝から昼過ぎまでリンクで過ごした双子は、今、屋敷で勉強に励んでいた。
それだけならいつもと変わらない光景なのだが、場所はライブラリーで、金色の2つの頭の他に、茶色の頭がぴょこんと紛れ込んでいた。
「ふわわ……」
スマートフォンのタイマーを停止したヴィヴィは、小さくそう発しながら、両腕をう~んと上へと伸ばす。
そのまま金色の頭を左右に振ると、ゴキゴキと恐ろしい音がした。
「ぶはっ オッサンかってのっ!」
速効突っ込んできたのは、真行寺 円で。
自分でもオヤジっぽかったなと思ったヴィヴィは、可愛らしい顔に不釣り合いな にへらと緩みまくった笑顔を浮かべた。