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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章             

「失礼……。眼精疲労が甚だしくて……」

 目頭を押さえてそう言い訳したヴィヴィに、円がくるりと後ろを振り向いて喚く。

「お兄ちゃん! ヴィヴィが肩凝ってるって、とっとと揉んであげて!」

「うぇっ!? ま、マドカ……っ ヴィヴィ、そんなつもりじゃっ」

 親友のまさかの言葉に、そう驚嘆したのはヴィヴィだけじゃなくて。

 離れたソファーセットに座っていた円の兄――真行寺 太一は、啜っていた紅茶にごほごほと派手にむせ。

 そして向かいに腰を下ろしていた匠海は、「くっくっく」と忍び笑いを漏らし。

 円の向こうに座ってこちらも勉強中のクリスは、丸めた冊子で円の茶色の頭をぽかりと叩いた。

「なにさ? なんで叩くのさ? うちのお兄ちゃん、超指圧うまいよ?」

 両手でオーバーに頭を抱えてみせる円に、双子は顔を見合わせて苦笑する。

「マドカ……、いつも、揉んで貰ってるの……?」

 クリスのその問いに、円は笑顔で頷く。

「うん。お風呂上りにいっつも! 血液循環良くなって、すっごく楽になるんだよ。あれだね~、お兄ちゃんの数少ない取り柄のひとつが、それだね~」

 天下の東大卒で大企業の跡取り息子、多趣味で博識な真行寺をそう酷評するのは、きっとこの世で円だけだろう。

「ぶはっ 面白い妹だな、真行寺?」

「はは……、本当に誰に似たんだか、先が思いやられる……」

 円の『鬼妹』ぶりを初めて目にした匠海が吹き出す横で、真行寺が「とほほ」と肩を竦めて見せた。

「ふんだっ 私だって匠海さんがお兄ちゃんだったら、もっとおしとやかで清楚な妹になったつーのっ!」

「え……。でも実の妹のヴィヴィが、 “こんな” だけど?」

 ぼそぼそと囁きあう女子2人は、ひとしきり笑い合うと、また視線と意識を目の前の勉強に戻す。

「ヴィヴィ、テスト、終わった……?」

 冬期集中講座の、東大特進数学の80分テストを受け終わったヴィヴィは、尋ねてきたクリスに頷く。

 自己採点した解答用紙を渡せば、その点数にクリスは満足そうに頷いた。

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