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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章             

「なんでロシア?」

 不思議そうに尋ねてくる円に、クリスが向き直る。

「フィギュアは、ロシア関係者、多いから……」

 コーチ、選手、振付師……、ロシアは昔から層の厚い、フィギュア大国なのだ。

「だよね~っ いいな~……」

 クリスの選択に羨ましそうな声を上げたヴィヴィに、双子の兄はナプキンで口元を拭いながら提案してくる。

「じゃあ、また、ロシア人家庭教師、つける……?」

「あっ そうしようか!」

 明るい声を上げて同意したヴィヴィに、クリスは先程の発言を改めた。

「じゃあ、僕……。ヴィヴィと同じく、選択は中国語とスペイン語にする……」

「家庭教師~? いいなあ~」

 双子のやり取りを見つめてそう羨ましそうな声を上げた円に、ヴィヴィは破顔する。

「マドカも来ればいいよ。3人で受けたほうが、絶対楽しいもん!」

 それに頑張り屋の円がいれば、自分も「なにくそっ」と頑張れそうだ。

「いいの? やった~っ!!」

 諸手を上げて喜ぶ円と、それを面白そうに見つめている双子に、彼らの兄が申し訳なさそうに口を挟んでくる。

「みんな……、楽しそうなところに、水を差すようだけれど……」と匠海が。

「うん。まず、東大に合格しないとね?」と真行寺が。

 東大卒の兄達の、その “あまりにも” な正論に、3人の弟妹は互いの顔を見合わせると、

「「「は~~~い……」」」

 そうしょぼんとした声を上げて、

 センター試験 まで 2週間

 東大前期試験 まで 1ヶ月と3週間

 その現実に、引き戻されたのだった。







 1月7日(木)。

 ヴィヴィは第2志望の慶応大学 法学部 政治学科への出願を済ませ。

 翌日、1月8日(金)。

 始業式でBSTに登校した双子は、20日ぶりに会う友人達と再会を喜びあった。

 けれど、彼らは3年生の受験生。

 始業式を迎えようが、また翌日からは授業は無く、週1回の登校日以外は自宅学習が続く。

 10時半には終わってしまった始業式からの帰り、双子は制服姿のまま、ある場所へとベンツで向かっていた。

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