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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
空調が整ったそこは、学園指定のコートでは暑くて。
始業式の為に着てきた式典用の紺のブレザーに、いつものワンピースの制服姿になったヴィヴィと、同じくブレザーといつもの制服姿になったクリスは、そこでしばらく待っていた。
「……会社って、こんなだったんだ……」
そうぽそっと呟いたヴィヴィに、
「前に、来たよね……?」
クリスがそう確認してくる。
「ん。でもあれ、初等部2年生とかだったでしょう?」
そんな事を話していると、父の秘書が双子を迎えに降りてきてくれた。
案内されたのは、最上階・50階にあるプレジデントフロアで。
茶色を基調にしたウッディーで贅沢な造りのそこに、またぽかんとしたヴィヴィは、クリスに手を引かれてCEOルームとやらに通された。
「ああ、来たね。双子ちゃん」
そうにこやかに迎えてくれた父に、ヴィヴィはダッシュで飛び付き(実際は部屋がかなり広くて、大分走ってから胸に飛び込んだが)、泣きそうな表情で訴えた。
「き、緊張したのっ ふぇええ……っ」
ここに辿り着くまでの、ヴィヴィにとっての非日常を全身で表現する娘に、父グレコリーの目尻は下がりっぱなし。
「あははっ もう、可愛いなあ、ヴィヴィは」
華奢な身体を愛おしそうにぎゅうと抱き締める父の傍に、クリスもやって来て呟く。
「うん……、とっても可愛かった……」
「~~っ!? クリスが受付で、言ってくれれば良かったのにぃっ」
双子で行動する時は、社交的なヴィヴィが表に立つ事が多いが、それでも会社という仕組みを良く分かっているであろうクリスの方が、今日は頑張ってくれてもよかったのではないか?
「ん……、なんか、頑張って、緊張してるヴィヴィが、面し――可愛かったから……」
そう悪気も無くとつとつと説明する双子の兄を、ヴィヴィは父の腕の中からじと目で睨んだ。
(おぬし、今……「面白かった」って言おうとしたじゃろう?)
「そんなに可愛かったのか?」
父のその問いに、クリスが頷く。
「うん……。「ありがとうございましゅ」って、噛んでたよ……」
「あははっ 期待を裏切らないね、ヴィヴィは!」